信毎の本 続・地図から信州が見えてくる
2024年12月2日
地形図を中心に新旧の地図を見比べ、街や地域の成り立ち、移り変わりを読み解く地理読み物。著者は地図や鉄道関連の著作が多く「長野県だけでも500枚以上」のコレクションを持つ今尾恵介さん。2022年9月刊の前作の続編で、前作同様25のエピソードを収録しました。その範囲は下水内郡栄村から下伊那郡根羽村まで、まさに北端から南端に及びます。
例えば、全国で唯一「温泉」を村名に名乗る下高井郡野沢温泉村。現村名になる前の村名「豊郷」からの改称には、住民らの強い思いが根底にあった…。また、南佐久郡佐久穂町の地図を見ると気付く「佐久市飛び地」。なぜ町域の集落の限られた区画だけが佐久市なのか? どちらの市町に入るかを決める住民投票で明らかになった複雑な思いの結果は…。
このほか、製糸業で発展した須坂市と村山橋(長野電鉄)の関係、長野市の裾花川沿いを走った短命の善光寺白馬電鉄、茅野駅から分岐し戦時中に鉄鉱石を運んだ諏訪鉄山専用側線、おびただしいほどのトンネルが連続する下伊那郡泰阜村の飯田線など、鉄道の話題も豊富です。
今尾さんは「各地域のいくつもの昔を観察できるのが、営々と作り続けられてきた地形図の強み。地図は時代を映す地域の肖像」と言います。ネットの地図では味わえない奥深さを味わってみてください。四六判、264ページで一部地図はカラー収録しました。税込み1760円。問い合わせは信濃毎日新聞社出版部(平日、電話026・236・3377)へ。