信毎の本=鉄道写真集 信州追憶の列車
2023年4月1日
蒸気機関車からディーゼルカー、電車。そして高速・快適な特急車両へ―。昭和30年代から60年代にかけて、主要な路線網が「国鉄」だった頃、鉄道は技術革新が進みます。難所の碓氷峠は明治末期に既に電化されていましたが、昭和38(1963)年には歯車状のレールで急勾配を克服するアプト式が廃止、より強力な電気機関車だけのけん引で行き来するようになりました。
本書は、信越本線、篠ノ井線、中央西線、長野電鉄などを中心に、この年代に県内や県境域を走った列車の姿を集めた写真集です。収録枚数は400枚超。今の時代からは考えられないような長大な編成で、坂を上り、トンネルを抜け、橋を渡り、豪雪の中を突き進み、大都市や県内各地を結んで、人や荷物を運びました。
本線を力強く進むD51や支線を軽快に進むC56などの蒸気機関車。ポスト蒸気を支えたキハ58系、キハ81系などの気動車。さっそうと登場した189系、381系などの電車特急などは、鉄道史を飾る代表的な車両です。
著者の小西純一さん(信州大名誉教授)は、鉄道友の会会員として趣味で撮影を続けた一方、橋やトンネルなど交通関連構造物の専門家としても鉄道に関わり続けてきました。機関区や駅構内、試運転・試乗会で撮影した貴重な場面が多いのも本書の魅力です。B5判272ページ、税込2420円。問い合わせは出版部(電話026・236・3377)へ。