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<信毎の本> “なおとみ流”リサイクルのヒストリー

2022年6月1日

 リヤカーで屑(くず)を集め歩いた一家の会社は今、ごみリサイクルをリードする―。長野市にあるスクラップ・廃棄物処理業者「直富商事」の70年余の歩みを通じて、製造業を主体とする国内産業を裏側で支える「静脈産業」の実像を伝えます。

 同社は終戦直後、初代の社長夫婦が屑商から会社を立ち上げ、家族経営で鉄スクラップ業を営みながら、やがて廃棄物回収との二刀流で事業を拡大。現在は従業員500人規模、食品廃棄物の堆肥化や燃料利用といった先進的なリサイクルに取り組むなど「静脈産業の総合商社」と称されるまでに成長しています。同社と社長一家三代の歩みをたどると、戦後日本の経済発展と表裏一体にある「ごみ処理」の歴史が浮かび上がります。

 成長をけん引した二代目社長の足跡を中心に描き、長野電鉄初代社長の神津藤平や、豪腕商社マンとして名をはせながらダグラス・グラマン疑惑で渦中の人となった海部八郎といった経済界の大物らとの交友録のほか、鉄鋼業界に関わる大手商社とのパイプづくりなど、同社飛躍につながったエピソードも紹介します。

 著者は環境問題などに詳しい元朝日新聞記者でジャーナリストの杉本裕明さん。直富商事も取り扱っているコロナウイルスによる感染性廃棄物や、台風水害で発生した膨大な「災害ごみ」の回収・処理の知られざる現場もルポします。

 四六判、350ページ、税込み1760円。問い合わせは平日午前9時~午後5時に信濃毎日新聞社出版部(電話026・236・3377)へ。