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<信毎の本> 満蒙開拓青少年義勇軍物語 「鍬の戦士」の素顔

2022年5月1日

 日中戦争下の満州へ。開拓と警備を目的に、16歳から19歳の青少年たちを都道府県単位で集めて入植させた「満蒙開拓青少年義勇軍制度」。将来への期待を抱きつつ信州から海を渡った若者たちもまた、敗戦後の悲劇へと巻き込まれていきました。

 送出番付で全国トップの長野県の若者たちは、いかにその人生選択へと進んだのでしょうか。本書は、送り出した教育会・教員と導かれた少年たち―という通例語られる構図を見直し、義勇軍入りを決断した青少年の視点から再検証します。

 国策である満州移民政策の柱の一つとして、義勇軍制度が1937年の閣議決定により始まり、45年までに現地へ8万6千人余を送出した経緯を振り返りながら、国や県、市町村、学校が用意し、キャリアアップへの「いざない」となったさまざまな施策や仕組み、さらには期待感を伴う周囲からの「まなざし」といった入植の動機を分析します。

 本書ではまた、義勇軍を支えた女性たちの存在にも光を当てます。未熟な少年たちを母性的な視点で見守った「寮母」をはじめ、「大陸の花嫁」として開拓地での「助耕者」「慰安者」「保育者」の使命を帯びた女性たちを養成し送り出したさまざまな仕組みを取り上げ、多くの犠牲者を出した「国策」の姿に迫ります。著者の伊藤純郎さんは伊那市出身で日本近代史研究者。

 四六判、232ページ、税込み1430円。問い合わせは平日午前9時~午後5時に信濃毎日新聞社出版部(電話026・236・3377)へ。