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<信毎の本> 新装版 あゝ 祖国よ 恋人よ

2021年8月1日

 安曇野市穂高出身の上原良司は慶大在学中に学徒出陣し、特攻隊員として1945年5月11日に鹿児島・知覧から沖縄海上の米軍部隊に突入、22歳で戦死しました。上原の学徒出陣前から特攻直前までの手記をまとめた本書は、従来ハードカバーでしたが、7月、価格を下げたソフトカバーの「新装版」として再刊行しました。

 上原の日記や遺書からは、開戦への興奮や勝利に貢献しようとする思いから、徐々に軍や戦争への疑問に変わっていく様子や葛藤が読み取れます。特攻前夜に記した「所感」には「願わくば愛する日本を偉大ならしめられんことを、国民の方々にお願いするのみです」「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます」と書かれ、学徒兵の遺稿集「きけわだつみのこえ」に掲載され、広く知られました。特攻直前に残した「戦死しても天国に行くから靖国神社には行かないよ」との言葉も、注目されています。

 本書はもともと、1985年に東京の出版社が刊行。絶版になった後は上原の妹清子さん(故人)が自費出版し、つないできました。2005年に信濃毎日新聞社が受け継いで「新版」を発行。このとき、編者の郷土史研究家中島博昭さん(87)=安曇野市穂高柏原=が、上原の思想変革の根底に、旧制松本中学時代に自由主義思想に触れる機会があったことなどを加筆しました。

 没後76年を経ても上原に対する関心は衰えていません。この8月、若い特攻兵士が命とひきかえに戦後に向けて発したメッセージに触れてみてください。四六判、296ページ。問い合わせは出版部(電話026・236・3377)へ。