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自動運転実験 期待乗せて 北海道の先行実走を体験

2018年1月03日(水)00時00分

自動運転の実験開始式の出席者を乗せて走る小型バス=2017年12月10日、北海道大樹町

 2020年までの自動運転実用化に向けて、国土交通省は今年2?3月、伊那市長谷で小型バスを使った実証実験に乗り出す。少子高齢化に悩む地域にとって、自動運転は利便性を高めるだけでなく、交通弱者対策につながると期待されている。同省は昨秋から全国13カ所で順次、住民の利用を想定した走行実験を実施。伊那市と同じ車両を使って実走した北海道大樹(たいき)町に記者が出向き、一足先に最先端の自動運転技術を体感した。

 広大な牧草地が広がり、馬が雪原を走る。十勝平野南部にあり、西に日高山脈、東に太平洋を望む大樹町は人口約5600人。酪農が産業の中心で過疎が進み、循環バスもない。
 町は主に高齢者の移動の足を確保するきっかけにしようと国交省の公募に応じた。走行実験は道の駅、町役場、小中学校、病院を巡る1周7・6キロのコースで昨年12月11日から6日間行われた。小型バスを改造した車両に町民延べ約120人が乗車。野菜などの荷物も載せた。
 記者は10日、町生涯学習センターを発着点に行われた報道機関向け試乗会と実験開始式に参加した。
 この日は晴れで、朝の気温は氷点下10度。試乗が始まったのは昼すぎで、凍結した路面の一部は解けて滑りやすい状態。道路脇には取り除かれた雪が積まれていた。
 実験で使った小型バスは20人乗り。東京大発ベンチャーの「先進モビリティ」(東京)が自動運転のシステムを開発し、車両を改造した。
 試乗向けルートは同センター発着の1・9キロ。記者は青木啓二先進モビリティ社長らと乗り込み、運転席の横の席に座った。
 「出ます」。運転席の同社社員が車内に声を掛け、右手側にある自動運転への切り替え用と発車用の二つのボタンを押した。エンジンがうなり、スムーズにバスが走りだす。あらかじめ有人運転でルートを試走し、衛星利用測位システム(GPS)で車内の装置に道順を記録させている。
 片側2車線の国道は歩道側の車線を走り、信号機のある交差点も難なく通過。いつ信号が切り替わるかを事前に秒単位で入力しておくことで、信号への対応をスムーズにしている。
 バスは国道を左折して住宅街へ。細い道で対向車が間近に迫る。「ぶつかるかも…」。一瞬ぎくりとする。だがバスはゆっくり減速、事もなく擦れ違った。車両前部のセンサーが対向車を感知し、自動で減速する機能が働いた。
 その後も坂道やうっすら積雪した路面を走り、出発から7分後、生涯学習センターに戻ってきた。運転席、車両のモニター、車外の様子に目を配っていたからか、あっという間で、ほとんど不安を覚えなかった。自動運転の実現はそう遠くないと感じた。「当初はスリップを心配したが、乾いた路面と同じように走れた」。青木社長もほっとした表情だ。
◇…………◇
 一方で、自動運転車両がどんな気象状況や交通環境でも安全に走れるのか、解消すべき課題が少なくないことも分かった。
 青木社長は「一番心配しているのが降雪」と語る。バスは常時、車体上部のアンテナで人工衛星4、5基から電波を受けて走る。その数が減るほど位置情報は不正確になる。アンテナを雪が覆ったら電波を受信できるのかといった検証が必要だ。
 現時点では、対応できない交差点もある。歩行者がボタンを押すと変わる信号は、いつ赤信号になるか予測できない。「信号機側から信号の色の情報を出すよう改良し、車両が受信できるようにならないといけない」と青木社長。自動運転車両が一般道を走れるようになるためには、さらなる交通インフラの整備が不可欠という。
 実験に使ったバスを含め、右折も大きな課題だ。直進してくる対向車を避けて、安全に右折するためには高度な判断が求められる。こうした技術はまだ確立しておらず、通行する全ての交差点に、右折のみ許可する矢印信号などの整備が必要という。
◇…………◇
 道の駅「コスモール大樹」を発着点に、翌11日には町民を乗せた実走実験が始まった。
 バス好きの長女(3)らと乗った会社員鈴木清香さん(33)は「乗る前は楽しみだったが、急ブレーキの時は不安になった」。決まったルートを走るバスが、ルート上にはみ出した雪の塊に接近し、運転手がブレーキを踏む場面があった。
 週2回、長女の通院で約60キロ離れた帯広市へ行く鈴木さんは「自分で運転すると降雪時は不安もある。安心して自動運転のバスに乗れる日が来るといいですね」と期待した。
 道の駅を訪れていた1人暮らしの女性(83)は「道が滑りやすい時は自分で運転しないようにしている」と話した。歩けなくなったときのため、自動運転の循環バスの運行を待ち望んでいるという。
 国が目指す自動運転の実用化まであとわずか。安全は最優先だが、地方こそ自動運転の効果が発揮されると感じた

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