それはさておき、ひとまずワイン

ワイン用ブドウの苗木

接木を作る機械

ナイフで接ぎ木した苗木(下がアメリカ系、上がヨーロッパ系)

赤い部分は接ぎ木部分を固定するためのロウ。芽はロウを突き破り出てくる(接いでから2~4週間くらいで芽が出てくる)

 先日、信濃毎日新聞の記事に「増産へ 県内相次ぐ動き ワイン用ブドウ 苗木不足深刻化」とありました。今回はブドウの苗木についてお話します。

 ブドウは種を植えて芽が出てきても同じ品種になるとは限りません。その理由は…(と、この説明をすると長くなってしまうのでまたの機会があれば)。その為「挿し木」もしくは「接ぎ木」をして苗を育てます。「挿し木」はとても簡単で、枝を30センチくらいに切って土に挿しておけば根が生えてきます。しかし、根が生え芽が出てくる確率は低いため、一般的には「接ぎ木」をし、栽培します。

 ワイン用ブドウの苗は、土中に埋まる部分をアメリカ系ブドウで台木に、上の実を付ける樹をヨーロッパ系ブドウの穂木を接ぎ木して作ります。違う系統のブドウを接木するのは何故?と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、そうしなければいけない理由があるのです。

 フィロキセラ(ぶどう根あぶら虫)というブドウ樹にとっての大敵がいます。その名の通り根の部分に寄生し、やがて樹を枯死させてしまう恐ろしい虫です。フィロキセラは元々北アメリカにしか生息していなかったので、アメリカ系ブドウはフィロキセラに耐性があり、特に被害がありませんでした。19世紀になり貿易が盛んになると、アメリカからも苗木がヨーロッパに輸入され、それと一緒に渡っていきました。

 ヨーロッパでフィロキセラの被害が最初に確認されたのが1863年と言います。ヨーロッパ系ブドウには耐性がなかったためにフィロキセラが蔓延し、ワイン史上最大の危機に陥るほど各国のブドウ畑を壊滅状態にしてしまいました。その後、試行錯誤して考え付いたのが、先に説明した「アメリカ系台木にヨーロッパ系ブドウを接ぐ」という方法であり、現在も使われています。

 日本にもフィロキセラが1882年に伝播し、猛威を振るったと言われています。もちろん今でも生息しおり、未だに撃退する方法は見つかっていません。という事は、ヨーロッパ系ブドウを「挿し木」で育成するといずれは…答えは“Yes”、枯れてしまいます。長野県でもあるブドウ園の方が「挿し木」で育て、何年かは順調に育ち実を収穫できていましたが、8年を超えたくらいでだんだんと枯れてきてしまったそうです。

 さて、長野県のみならずワイナリーが増えている日本。良いことだとは思いますが、そのために深刻な苗木不足の事態になるとは予測がつかなかったのでしょう。苗木屋さんに頼んでも1~2年待ちです。ブドウが育たない限り、当然ワインはできません。苗木不足解消に向け関係各所が動き出しましたが、記事通り数年は難しいでしょう。

 ただ、栽培家たちは指をくわえているだけだけではありません。自分たちで台木を育て、接ぎ木して苗を作っている方もたくさんいます。そういったことも含めて日本のブドウ栽培の技術向上になっていくことでしょう。日本のワインの歴史は世界的に見れば始まったばかり。一つ一つ問題をクリアして、文化として、産業として育って行ってほしいです。

 さて今日もひとまずワイン飲みましょうか。

2017年2月08日


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