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科木(しなのき)

 先月末、松本市の中心街に仕事で行った。お城に向かう通りを歩いていると、街全体がとてもいい香りに包まれていた。歩く人、日本人も外国人も皆、一様に「えっ、これは何の香り」と言わんばかりに、あたりを見回しながら、やがて街路樹の科木(しなのき)に目が届き、房のように咲き誇る花々を見上げている。体と手で木を仰ぎながら、息をいっぱいに吸い込み、何やら連れと語り合い、気持ちよさそうな雰囲気だ。きっと、松本の街の好感度はよりアップしただろうな。初夏の街を香りで満たす、何と上質なもてなしだろう。

 我が庭にも香る木の花はたくさんある。定家葛(ていかかずら)に朴の花、大山蓮花に卯木(うつぎ)の花。しかし、体全体が包み込まれるような気分は初めて。長野市に住んでいながら、科木が市木であることを知らなかった私の初感激。それに、科木は皮が繊維として布にもなる。私は、科木でできた夏用の帯を持っている。少し、ごわっとしているけれど、軽くて涼しくて、手作り感が何とも言えず、好き。こんなに香(かぐわ)しい木を切り倒し、帯にもなってしまったこの木は二度と香ることはなかったのだなあと、少し申し訳なく思い、今年の夏は締めることにする。

【写真上】古バケツの植木鉢
 何年も使ったバケツに無数の穴が開いた。水を入れると、まるでじょうろのよう。いっそじょうろにしようかと思ったのだけれど、先の定まらない水に閉口する。土を入れて、農協でおまけにもらった草花を植えて玄関脇に置く。

【写真中】インドのさじ吊り
 旅でインド街に出合い、面白い形の手編みを見つける。何と見本にいろいろなさじやお玉が吊り下がっていた。“わっ、素敵”。日本円で500円ほど。さまざまな形のさじがいっぱい吊るすことが出来る。私の台所で。

【写真下】ふきのとう弁当
 春に漬けたふきのとうのしょう油漬け。刻んで炊きたてご飯に混ぜてお弁当に。苦くて少ししょう油味がしみておいしい。苦味の食材がもたらす、何ものにも代えがたい味だ。

2017年7月01日


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