信州FOOD記

信州を代表する食文化~虫食~

瓶詰めや缶詰で販売されている蜂の子とイナゴの佃煮。手軽に楽しめます。イナゴは子供のころ食べたものより少し小ぶりで食べやすいです

中国上海からバスで1時間ほどの水濠の街「西塘」で見た虫の串焼き。素焼きの状態で売られていました

昔は方々で見ることができたイナゴ採り。今ではあまり見ることができませんが、採るときには夜、イナゴが寝ている時間が簡単だそうです。この秋、チャレンジしてみたくなりました(画像素材:PIXTA)

 「信州FOOD記」を始めた頃から、いつかは書かなきゃと思っていた信州を代表する食べものがあります。しかし、自身の苦手意識からなのか、避けてしまっていました。実は私、「虫」が苦手なのです。

 虫といえば、信州では「虫食」が有名です。フードアナリストの資格を取得するとき、一緒に受講した全国の仲間と地元の食文化の話になると必ず出たのが「信州人は虫食べて育つんでしょ?」とか「虫がおやつって本当?」などの言葉。信州の虫食は、他県の人たちからかなり強いイメージを持たれていることを知りました。

 食べ物の好き嫌いや馴染みがあるかどうかは、親や祖父母の好みが影響することが多いでしょう。我が家も祖母や母が虫を好んでいなかったせいか、食卓に上がることはありませんでした。友人の家に遊びに行ったときなどに時折「イナゴの佃煮」が出てきた程度なのです。

 以前中国上海に行ったのですが、少し郊外の西塘(シータン)に行ったとき、観光施設で串に刺さった虫が売られているのを見つけました。最初、虫を形取った飴細工かと思ったのですが、よく見るとやはり虫! サソリやムカデのようなものが素焼きのような状態で、今にも動き出しそうでした。鳥肌が立つほどびっくりしたのですが、もっと驚いたのがそれを大人から子供まで、美味しそうに食べているではありませんか!(売られているので当たり前なのですが…) 中国では、素焼きのような状態で虫を食べる食文化があるそうです。私はあまりの見た目に、食べる勇気がありませんでした。

 この光景を見たときに、信州の虫食を思い出したのです。イナゴ、蜂の子、蚕の蛹(さなぎ)、ザザ虫など、信州には多くの虫食文化があります。食料事情が良くなかった時代、虫は自然の中で手に入る貴重なタンパク源だったと言われています。身近なものを当たり前のように食べることで、タンパク質を摂取していたのです。

 いろいろな人にお話を聞いてみました。

 飯山市の60代の女性は「子供のころ、イナゴ、蜂の子、カマキリをよく食べた」とのこと。カマキリは初めて聞いたのですが、フライパンで空炒りして食べていたそうで、特に卵を持ったメスのカマキリが美味だったそうです。長野市の80代の男性は「養蚕が盛んだった頃、蚕の蛹をよく食べた。苦手だったけど、他に食べるものもなかったからな~」と。

 他にも、「子供のころ、イナゴや蜂の子をよく食べた」という話が多く聞かれました。イナゴ、蜂の子は虫食の中でも受け入れやすいものだったようで、多くの人が抵抗なく食べていたことがわかりました。いずれも佃煮や甘露煮という食べ方が多く、蜂の子はご飯にかけたり、炊き込みご飯にする食べ方も好まれていました。

 食べた思い出とともに、捕まえたことがあるという方も。東御市の女性(40代)は、「昔、秋になるとおばあちゃんとイナゴ採りに行った。袋状に縫った日本手拭いを竹筒にくくりつけて捕まえたイナゴを入れていき、少し置いたあと、そこに熱湯をかける。その時のイナゴが暴れるビチビチという音が耳に残っている」と。そういえば、私も子供のころ、友人と一緒に布袋にサランラップの芯をくくりつけたものを持って近所の田んぼにイナゴ採りに行ったことを思い出しました。おっかなびっくり、腰が引けてしまいあまり採れなかったことを覚えています。

 蜂の子は、煙幕花火を使って巣を燻して採るのが一般的ですが、違う方法も。「ボケて柔らかくなったナスを竹に刺して、蜂の巣の前に出す。刺激された蜂がナスに針を刺し、動けなくなったところで蜂の巣を取っていた」という採取方法もありました。巣を獲ったあとは、爪楊枝などで一つ一つ幼虫を巣から取り出すそうです。

 驚きの食べ方もありました。長野市の40代男性は、「青木湖(大町市)に仕事で行ったとき、10時のお茶うけでスズメバチの成虫の焼酎漬けが出た。地元の方が普通にバリバリ食べていた」という話。また、「スズメバチの巣の駆除をお願いした農家の方が、単に棒で叩くという極めて原始的な手法で巣を落とした。中に入っているスズメバチの幼虫をそのまま口の中に入れて軽く咀嚼して飲み込みこんでいてびっくりした」と、同じく長野市の40代男性。なんと生食まで!!

 この「虫食」については思った以上に多くのお話を聞くことができたのですが、「昔はよく食べたけど最近は食べていない」という声が多く聞かれました。食事情が豊かになったこともありますが、特にイナゴは採れなくなってきていることも理由の一つのようです。農薬との因果関係を指摘する声もあります。私が昔イナゴ採りをした田んぼは、今では住宅地となっています。

 時代の流れとともに、信州人が日常的に食べていたものから「思い出の食べ物」となりつつある虫。「信州の珍味」として、末永く続いて欲しいと思いつつ、蜂の子とイナゴの佃煮を久しぶりに食べてみました。すると意外や意外、美味しかったです! 一つ苦手を克服しました(笑)。これからの季節、お酒のおつまみにオススメですよ。

2017年7月20日


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