信州FOOD記

木曽地方の新緑の便り~ほうば巻

<上>ほうば巻は1つ160円(税込)。つぶあん、こしあん、みそぐるみ、そばの4種類 <下>イグサの紐を解いて葉を開くとフワッと朴葉の香りが広がります

<左上>餅を包む作業場 <右上>包む前の朴葉。きれいな緑色です <左下>手早く包み、イグサの紐で結びます <右下>包み終わるとキレイに立ちます。これも熟練の技

木曽福島の町内にある御菓子司田ぐちさん。ほうば巻の時期には次から次へとお客さんが訪れます

 毎年、梅雨を迎えるころになると食べたくなるものがあります。食べると甘い香りが鼻腔を抜ける感じがたまらない「ほうば巻」です。何年か前、木曽出身の友人から初めてもらって食べた時に、口の中で感じたこの香りに感激したことを覚えています。今回は木曽の風物として人気の「ほうば巻」を求めて木曽町へ。木曽福島にある「御菓子司田ぐち」さんにお邪魔しました。

 実は、一番最初に食べたほうば巻が、田ぐちさんのものでした。ほうば巻は朴(ほう)の木の葉っぱ「朴葉」で包んだお餅で、月遅れの端午の節句(6月5日)に昔から各家庭でつくられていた木曽地方に伝わるお菓子です。田口益生(ますお)社長(44)によると、起源は諸説あるそうですが、田植えが始まる時期に五穀豊穣を願い、田植えの神様に捧げるために畑で食べたのがはじまりと言われています。

 ほうば巻は毎年、5月の半ばから2カ月間販売されます。桜が終わってちょうど1カ月経ったころからが朴葉の収穫期です。シーズン最初は岐阜県中津川市あたりのものが使われ、徐々に北上。7月のシーズン終わり頃には王滝村周辺の朴葉になります。今年は例年に比べて成長が遅かったそうですが、その分葉っぱの状態は良いそう。保存はせず、フレッシュな葉っぱを使います。

 餡を入れたお餅を一つ一つ手作業で包んでいますが、この包む作業が一番難しいのだそうです。葉っぱの大きさは千差万別ながら、中に入れるお餅は同じ大きさ。さらに、一つの枝についた5~8個ほどのお餅を包み終わった時に、きれいに立つように包まなければなりません。取材に伺った日も、10名ほどの女性が朴葉にお餅を包んでいました。一房包み終わって立てると見事に同じ高さ。さすが、熟練の技です。

 店頭にあるほうば巻は次から次へと売れていき、その都度作業場から足されているのですが、一体1日いくつ売れるのか…。聞いてみると、なんと平均6000個。6月5日前後のピーク時には1日8000個ほど売れるのだそうです。この数には驚きました。

 地元の方だけでなく、今は木曽を離れている家族や親戚、友人への贈答用や、県内外のお客さんからの注文も多いそうです。年配の人が多いせいか、インターネットよりも電話やFAXでの注文が多いそうで、「年に一度、近況報告をしてくれるお客さんもいるのが嬉しい」と田口社長。ほうば巻が美味しかったと、お客さんから届いた絵手紙が店頭に飾られていました。

 「ふる里を つつんでおくる ほうばまき」
 あるお客さんが詠んだ句で、現在お店のパンフレットにも書かれています。木曽地方から、新緑の季節の“食の便り”として、今も昔も多くの人々を魅了する「ほうば巻」。甘く、重厚な味と香りを楽しんでみませんか?

2017年6月30日


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