信州FOOD記

山のワサビ「陸ワサビ」~信州新町~

山の斜面に広がる陸ワサビ。白い花がとても可憐です。根の部分は水ワサビ同様、ワサビ芋がつきます

陸ワサビを育てている竹村純委さんと、週末は手伝いをしているご主人の修次さん(62)。斜面での仕事は大変だそうです

竹村さんが出してくださった数々のお料理。おひたし(上段左)、花を添えた豆腐(上段右)、ご飯にのせたワサビ丼(中段)、ベーコンとカマボコ(下段左)、お土産に頂いた山菜(こごみ、山うど)と陸ワサビの葉と芋(下段右)

 取材の日、朝7時に家を出て信州新町に向かいました。国道19号線から脇道に入り、5分ほど山道を上ったところで、私の前を走っていた案内の方が車から降りてきました。「ここからの道はきついカーブも多くて細いから気を引き締めて運転するように」。前日の電話で、なるべく小さな車で来るようにいわれたことも相まって、どんなにすごいところに行くのか…。緊張しながらいくつもカーブを曲がること10分。対向車が来てもすれ違えないほどの山道を上ったところに、今回の取材対象物がありました。まさかこんなところに、こんなものがあるなんて!

 その山の斜面に広がる緑色の葉とこの時期に咲く小さな白い花。これが「陸(おか)ワサビ」です。ワサビというと、安曇野の清流で栽培される「水ワサビ」が有名ですが、実は信州新町もワサビの産地なのです。ここ、山穂刈地区は昔、蚕の餌となる桑畑が広がり、その葉の陰でワサビが自生していました。陸ワサビは日光に弱く、桑の葉の陰が育ちやすいのだそうです。

 ここで陸ワサビを育てている竹村純委(すみい)さん(62)にお話を聞いたところ、この周辺にあるのは「赤軸」「達磨(だるま)」「島根3号」という品種が中心だそう。赤軸は赤い茎が特徴。元々信州新町周辺の山で自生していたものが原種で、現在は交配によって変わってしまっているそうです。どの品種も小さな白い花を付けていました。

 竹村さんは、花の咲いた茎と、根についた“芋”を、長野市篠ノ井東福寺の滝沢知寛さんを通じて「根付・陸花葉ワサビ」として京都、金沢、東京の市場に出荷しています。花が咲くのは4月半ばから5月初旬まで。花と芋がついているものは珍しく、年々需要は高まっているそうです。

 陸ワサビは暑さと日光に弱く、北向きの日陰で栽培されています。株分けで一つの根からいくつも茎を出します。花が終わり、月遅れのお節句(6月5日)が過ぎると、芋の部分を出荷する農家もあるそうです。竹村さんは芋は出していないため、今が一番の最盛期。陸ワサビは主に加工用として使われることが多く、茎と葉が「ワサビ漬け」の材料として使われるそうです。根の部分は水ワサビと同じように“芋”がついていますが、年数が少ないようで少し小さめでした。(4年、5年と年を越すことで根は育ち、大きくなります)

 畑を見せて頂いたあと、この陸ワサビを使ったお料理を是非食べて欲しいと、山の中の集落にあるご自宅に招いて頂きました。まずは「おひたし」。茹でてしまうと柔らかくなってしまうため、塩と砂糖を揉み込んだものをお湯に晒す方法で作っています。ワサビの香りとほのかな辛味があり、清涼感を感じます。根の部分は自分でおろしてみました。辛味を引き立たせるために砂糖をつけながらおろし、まずはそのままいただきます。鼻に抜けるツーンとした辛さは水ワサビと変わりませんが、ほのかに土の香りを感じます。ここが水ワサビとの一番の違いだと思いました。竹村家での食べ方は、お刺身などにつけるというより、おひたしや、しょうゆ漬け、粕漬けなどが定番。最近では、生ハムにつけるのもオススメだそうです。この日はベーコンやカマボコもいただきました。

 実は私、陸ワサビを食べるのは初めてでした。水ワサビは大好物で「薬味」として欠かせません。今回、「山のもの」にはこの陸ワサビが合うのではないかと思いました。最後に出してくださったのが「ワサビ丼」。白いご飯にかつお節とすりおろした陸ワサビをのせ、しょうゆをかけて食べるというシンプルなもの。これがとても美味しかったです。竹村さんは「年々、作る人は少なくなってしまっているけれど、水ワサビとはまた違った味が楽しめるのが信州新町の陸ワサビ。多くの人に知ってもらい、食べてもらえたら嬉しい」と話してくれました。道の駅や農産物直売所などで「陸ワサビ」を見つけたら、ぜひ“山の味”を味わってみてください。

2017年4月25日


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