信州FOOD記

松本の飴文化

にぎわう「松本あめ市」。“たぐり飴”は中々うまく巻き取れず苦労しました。優しい甘さが口いっぱい広がるとても懐かしい味

飯田屋飴店の「あめせんべい」の製造。とても繊細なので、ひとつひとつの工程には熟練した技が必要。守っていきたい職人の技です

松本市大手にある「飯田屋飴店」。看板商品の「あめせんべい」の他、福飴やハッカ、ニッキの飴など手作りの飴が並びます

 戦国時代、越後の上杉謙信が甲斐の武田信玄に塩を送った「敵に塩を送る」という話にちなみ、松本地方で昔から開かれていた「塩市」。いつしか「あめ市」となり、今では毎年開かれています。1月7日、8日に松本市で開催された「松本あめ市」に行ってきました。実はこのお祭り、思った以上に盛大でした。

 一番大勢の人が集まっていた「あめ市横丁」では、懐かしの「たぐり飴(1回50円)」に挑戦。お米からできた温かくて柔らかい水飴を、壷の中から割り箸にたぐりながら巻きつけるのですが、これがなかなか上手くできません…。私の前に挑戦していた小学生はけっこう上手く巻いていたのに…。ちょっと細めにまきついたたぐり飴は、口にいれるととても優しい甘さが広がり、一気に懐かしい気持ちが溢れました。「この味、前に食べたのはいつだっただろう?」。子供の頃、祖父母の家にいくと水あめがあって、お手伝いをすると同じように割り箸に巻きつけてくれたことを思い出しました。

 他にも出店で、昔懐かしい「ニッキ飴」や「ハッカ飴」、見た目も可愛い「福飴」などを購入しました。このニッキやハッカの飴も最近は食べる機会がなく、今回食べてみて美味しさを再確認。その秘密を探るべく、松本市の老舗「飯田屋飴店」へ行ってきました。

 飯田屋飴店は寛政8(1796)年創業。今年で221年目を迎えます。松本市には現在、昔ながらの飴を作るお店が3軒あります。この取材はあめ市が終わって10日ほど経ってからでしたが、店頭に並べる飴がないほど大盛況だったようです。しかし、飯田屋さんも一時は手作りの飴が下火になった時期があったそうです。9代目で専務の伊藤雅之さん(44)にお話を伺いました。

 いずれは飴店を継ぐつもりだった伊藤さんは大学卒業後、まったく別の世界もみてみたいとゼネコンに入社。2年間勤務し、退職して帰省しました。2000年ごろのこの時期は大手メーカーに押され、いわゆる「手作り離れ」の時代。お父様でもある先代は別の商売もはじめ、注文があった時だけ飴をつくっていたそうです。伊藤さんは機械を導入し、大量生産を目指した時期もありましたが、少しずつ「手づくり」が見直されるように。「もう一度手作りの飴を軌道に乗せ、守っていこう」と原点に戻ることにしました。

 季節や天候によって出来上がりが一定ではないのも、手作りならでは。「一定のラインは超えても、それが100%の出来にならないとストレスを感じる」と伊藤さん。伝統と技を守りながら、より良いものを作るために日々励んでいます。飴は外気温が低い時期に、暖めた屋内で作るとよくできることから、今が「旬」なのだそうです。「今一番食べてもらいたい季節」と話します。

 口に入れるとなぜかホッとする昔ながらの手作り飴。「松本あめ市」でも、たぐり飴やべっこう飴、創作飴などを口にいれた子供たちが本当に美味しい顔をしていたのが印象的でした。「松本あめ市」や2月11日(土・祝)に開催される大町市のあめ市とともに、この手作り飴の伝統を守っていってほしいと心から思いました。

2017年1月31日


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