信州FOOD記

どんなお雑煮を食べますか?

小布施「鈴花」さんで作っていただいたクルミ入りのお雑煮。(下)左上の団子状のクルミを溶かしながらいただきます。コクが出てなんともいえない美味しさ

中島家のお雑煮。具はキジ肉、ミツバ、焼いた松代一本ねぎ、ユズのすまし仕立てです

(上)権堂のます栄のお雑煮。京都風の白味噌仕立てですが、鯉の出汁、角餅で“京都信州風”。 (下)信州で一番多かったお雑煮はすまし仕立てで角餅、具材は鳥肉とニンジン、ダイコン、ハクサイなどの野菜とミツバ、ユズ、かまぼこが入ったもの。こちらは長野市若穂のフードクリエイター倉島のぞ美さんのお雑煮

 明けましておめでとうございます。本年も「信州FOOD記」をどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、お正月といえばお雑煮です。我が家も毎年、元旦にブリの照り焼きとともに家族揃って食べています。我が家のお雑煮は角餅ですまし仕立て、具材は鶏肉(手に入ればキジの肉を使います)、ミツバ、蒲鉾、焼きネギ、ユズなどが入ります。何となく、毎年同じような具材になりますが、年によってミツバがホウレン草になったり、ニンジンが入ったり入らなかったりといった具合です。

 キジを入れるのは、私が住む長野市松代周辺ではかつて山鳥が多く獲られていたことと、松代藩主の真田家が元旦にはキジのお肉を食べていたということで、入れる家庭が多かったそうです。ただ、今ではキジが手に入れにくいということもあり、鶏肉や鴨肉で代用している家庭が多いようです。あたりまえのように毎年ほぼ同じお雑煮をつくり、あたりまえのように食べていますが、他のお宅ではどんなお雑煮を食べているのか…。調べてみることにしました。

 もともと、お雑煮は「儀礼料理」としての意味もあったそうで、大晦日に年神様にお餅をお供えし、元旦にその“お下がり”としてお雑煮を食べたそうです。五穀豊穣や家内安全を祈り、縁起物として欠かせないものでした。全国的にみると、石川、滋賀、三重、和歌山を結ぶ線を境に北は角餅、南は丸餅を使うというのが一般的。すまし汁が基本ですが、京都や関西を中心に白味噌仕立て、鳥取や島根のあたりでは小豆汁仕立て、関西や福井の一部では赤味噌仕立てというところもあるそうです。

 実に様々なお雑煮がありますが、聞いてみると県内にも色々なお雑煮がありました。基本的には角餅のすまし仕立てが多いのですが、具材は、我が家のようにお肉が入る家、焼いたブリが入る家、色々な野菜が具沢山入る家などなど。そして今回、取材をして初めて知り、驚いたお雑煮があります。しかも、比較的近い地域のものだったのが驚きでした。

 そのお雑煮は、すまし仕立てでお肉やかまぼこ、ミツバなど、ほぼ我が家のものと同じようなお雑煮なのですが、そこに擦ったクルミやクルミ砂糖をかけて食べるというお雑煮なのです! これにはびっくり! しょうゆ味のすまし仕立てにくるみ、くるみ砂糖…。まったく想像ができません。このクルミが入るお雑煮は、主に長野市北部と東部、須坂市、小布施町あたりに多く見られました。

 どうしても食べたかったのでクルミ入りのお雑煮をお店でも出しているという小布施「鈴花」さんにお願いし、作っていただきました。小布施鈴花のオーナー鈴木徳一さんは20年ほど前、当時勤務していた老舗和菓子店「小布施堂」の社長のお母様からこのお雑煮を教わり、小布施堂のレストラン「蔵部」で出していました。とても評判がよかったため、鈴花でも開店以来ずっと作っているそうです。

 鈴木さんはすまし汁を二度仕立てにしています。まず薄めの味噌汁をつくり、それを漉し、塩としょうゆで味を補います。お餅は関西風の丸餅、具材は丸く切った日の出ニンジン、ブリ、ダイコン、セリ、ユズ、そしてペースト状にしたクルミです。はじめて食べる組み合わせにちょっとドキドキしながら箸をつけました。「クルミを溶かしながら食べて」と鈴木さん。少しずつ溶かしながら食べてみると、想像とはまったく違った味が口に飛び込んできました。普段食べるお雑煮とはまったく違う美味しさなのです。クルミが入ることにより、コクが増し、すまし汁とも、お餅ともとても相性が良いのです。「くるみが入らないとお雑煮じゃない!」という人がいるのも納得でした。正直言って、来年から、我が家のお雑煮にもクルミが入る可能性大です。

 今回、取材でこのお雑煮以外にも、初めて食べたお雑煮がいくつかありました。まずは京都風の白味噌仕立てのお雑煮。これは長野市権堂にある「ます栄」さんで。味噌は関西から取り寄せた正真正銘の関西風ですが、出汁を鯉からとり、お餅が角餅だったので“京都信州風”とでもいいましょうか。これも鯉の風味が奥から感じられ、美味しいお雑煮でした。そして、もう一つ、友人から聞いて食べてみたいと作ってみたのが“金沢風”。すまし仕立てで具はユズとミツバのみというとてもシンプルなもの。しかし、さすがは加賀百万石。とても洗練されたお雑煮でした。

 それぞれ「家庭の味」が凝縮されたお雑煮、受け継がれてきたお雑煮。そこに、県内外から嫁いできたお祖母さんやお母さんの味が加わり、少しずつ変化しているという話も聞きました。地域性だけでなく、「それぞれの家庭の味」なのだと思いました。皆さんはこのお正月、どんなお雑煮を食べましたか?

2017年1月16日


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