信州FOOD記

“お年取り”に欠かせない「つぶつぶ」

ダイコン、ニンジン、ゴボウ、里芋、レンコン、こんにゃく、ちくわ、豆(大豆)、銀杏、車麩、10種の素材が入った「つぶつぶ」

煮干しでだしをとった後、具材を煮てしょうゆなどで薄く味をつけます

2015年の大晦日、中島家で作ったつぶつぶには銀杏と車麩はなく、鶏肉を入れていました

 2016年もあとわずかとなりました。皆さまはどんな年末年始を過ごす予定ですか? クリスマスが終わり、大晦日が近くなると台所では「お年取り」と「おせち」の準備が始まります。

 長野市松代の我が家では母や義妹と手分けをして準備をし、大みそかを迎えます。そして、「お年取り」と呼ばれる夕食のとき、並ぶ料理は毎年だいたい同じものです。年取り魚はサケ?それともブリか? そんな話題が上がる時期ですが、我が家ではサケを焼き、熊本に住む母の友人が送ってくれる車エビ、豚の角煮、そして「つぶつぶ」が並びます。という話をすると、必ず聞かれるのが「え?つぶつぶ?なに?」

 「つぶつぶ」というのは、野菜や根菜を指先ほどの大きさに切り揃えて煮たもの。けんちん汁の具が小さいものを想像してもらえるとわかりやすいでしょうか。実は私も、この煮物が「つぶつぶ」という名前だと認識したのはここ10年ほどのことで、「つぶつぶ」が“信州の”“ 北信の” “ 長野市の”ではなく、ほぼ私の住む「松代町」でしか食べられていないことを知ったのもここ1~2年のことです。毎年「お年取り」の食卓にある“煮物”として、当たり前のように食べていたものが実は当たり前のものではなかった…ということを知った時は少しショックでした。

 祖母が亡くなってからは、毎年同じように母が作っている「つぶつぶ」。他のお宅ではどうなんだろう?と、町内の人に話を聞いてみると、やはり
 「毎年作るよ!」
 「え?松代だけなの??」
 「そうそう、他の地域の人知らないよね?」
 「嫁ぎ先で驚かれた」
など、いろいろな感想を聞くことができました。そして、入れる具材も家庭によって様々でした。正しいつぶつぶってどんなものなんだろう? 松代のお料理に詳しい坂口酒店の坂口萬千子さんにお話を聞きました。

 「定義というほどのものはないけど、全ての具材を同じぐらいの大きさに切ってだし汁で煮るんだよ。だいたい1.5~2cmぐらい。それから、10種類の具材を入れるということ」
 「10種類!?」
それは私も今回初めて知りました。おおよそそのぐらいの具材は入れていたのですが…。坂口さんの話だと、一般的にダイコン、ニンジン、ゴボウ、里芋、レンコン、こんにゃく、ちくわ、豆(大豆)、銀杏、車麩(くるまぶ)の10種なのだそうです。

 我が家のつぶつぶに銀杏が入っていなかったのは、きっと祖母と母が苦手にしているからかな。銀杏と車麩は今まで中島家のつぶつぶでは見たことがありませんでした。この10種の具材を小さく切り、だし汁で火が通るまで煮たあと、しょうゆで薄く味をつけるという本当にシンプルな煮物です。昔はこのように野菜や根菜、豆だけで作っていたそうですが、今は家庭によって鶏肉を入れたりもするそうです。

 なぜ、松代だけなのか?ということについては、定かではありませんが、真田家から伝わったのではないか?という声が多く聞かれました。そのため、松代藩だった小川村など西山地区でもこの「つぶつぶ」を食べる家庭があるそうです。今年は大河ドラマ「真田丸」で大いに湧いた松代町ですが、真田のお殿様も食べていたかもしれない「つぶつぶ」。素朴でシンプルながら、素材の味を活かした煮物。ここ松代町では欠かせないお年取りの一皿です。今年は我が家の「お年取り」でも、この10種を使った「つぶつぶ」を作り、新年を迎えたいと思います。

 さて、2016年の「信州FOOD記」も今回が最後です。1年間、ありがとうございました。2017年も皆さまにたくさんの「美味しい」出合いがありますように。良いお年をお迎えください。

2016年12月21日


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