信州FOOD記

皆に愛される牛乳パン~小松パン店

クリームがたっぷり入った小松パン店の牛乳パン(302円)。ボリューム感が自慢

午後の早い時間帯には売り切れてしまう牛乳パンは電話予約可。創業当時からある味噌パンも人気の品。日持ちする味噌パンは明治時代に編成された旧日本陸軍の「歩兵50連隊」の携帯食として重宝されていたそうです

130種類ものパンが並ぶ小松パン店。食パンだけでも12〜13種類あります。4代目のご主人、小松治夫さん

 頻繁に食べるわけではないけれど、たまに食べたくなるものってありませんか?

 学生時代、東京に住んでいた頃のこと。ある日、無性に食べたくなったもの…それが「牛乳パン」です。厚めのフカフカパンにたっぷりクリームが挟まった牛乳パン。早速、住んでいた町の“昔からあるような”パン屋さんへ向かいました。あんパンにクリームパン、メロンパン…牛乳パンは? どこ? その店には牛乳パンはありませんでした。

 あまり深く考えず、「このお店にはないのね」と諦めていましたが、よく考えてみると東京では一度も牛乳パンを食べることなかった気がします。信州に戻ってから、たまーに食べたくなって食べていたのですが、最近になって「牛乳パンは長野のご当地パン」という話を耳にして正直、驚きました。約40年、あんパンやジャムパンのように、日本中で昔から愛されているパンだと思っていたのですから。「小さい頃よく食べたよ!」とう県外出身の友人に聞いてみたところどうも話がかみ合いません。よく聞いてみると、彼女がいうソレは生地に牛乳が練りこまれたいわゆる「ミルクパン」だったのです。真相を探るべく、牛乳パンが有名な店を訪ねました。

 牛乳パンといえば必ず名前が挙がるのが、松本市大手にある1922(大正11)年創業の「小松パン店」。調理パンや菓子パンなど130種類ほどのパンを販売している、昔ながらの"町のパン屋さん”です。中でも牛乳パンは毎日120個販売され、早い時にはお昼に、遅くても夕方を待たずして売り切れる人気商品だそうです。

 4代目の小松治夫さん(66)に「牛乳パン」について尋ねると、「発祥が長野県なのかは諸説あるけど、昭和30年代のはじめに長野県全域で販売され始めた」とのこと。長野県パン商工組合(2016年2月に解散)で「何か新しいことを」と一斉に始めたという説と、どこか1店舗が作り始め、この組合を通して全県に広まったという説があるそうです。いずれにしても短期間に全県に広まり、長野県だけに定着したことは間違いないようです。また、牛乳パンで共通するのが、パンを包む袋。乳白色の薄いポリ袋に入れて販売する店舗が多く、小松パン店もそのスタイルは変えていません。(新潟県の上越地方にも同じスタイルの牛乳パンが販売されています)

 発売してから約60年。私にとっても、多くの長野県民にとっても“懐かしい味”といえるご当地パンです。ただ、小松さんは「時代によって手に入る材料が変わるので、配合も変えている」との意外な話も教えてくれました。小松さんが目指してきたのは「子供からお年寄りまで、幅広い年齢層に愛される牛乳パン」。先代のお父様から引き継いだ際、長く愛されるようにと10年ほどかけて味の改良を行ったそうです。

 80代の女性は女学校時代から通い続け、安曇野から買いに来た女性(30代)は子どもの頃から定期的に買いに来ているそうで、今ではお子さんも小松パンの牛乳パンのファンだそうです。「フカフカの生地と口どけの良いクリームが自慢」という小松さん。このたっぷりクリームを食べ終えると「食べ過ぎた!」と思うのですが、しばらく経つとまた食べたくなるから不思議です。

 なぜこのスタイルの牛乳パンになり、なぜ全県で流行り、60年も愛され続けいるのか? 小松さんも「不思議だ」と言います。みんなに愛される“何か”があるのでしょう。いわゆる「町のパン屋さん」が減りつつある昨今、牛乳パンを販売する店舗も少なくなって来ました。バケットなど“オシャレな”パンも美味しいけれど、口の周りにクリームをたっぷりつけながら食べるパンこそが「牛乳パン」。ずっと無くならないことを切に願う逸品です。

■小松パン店
松本市大手4丁目9−13
営業時間:8時30分~19時 ※定休日:日曜・祝日

2016年12月13日


バックナンバー

楽しむ

エンタメコラム
特選お役立ちコラム
中島麻希 信州FOOD記
成沢篤人 それはさておき、ひとまずワイン
横山タカ子 暮らしの調味料
東京アート日和
信州スポーツ
信州お天気手帖
イベント情報
イベント情報投稿
書籍・CDランキング
グローバルメニュー
  • 信毎デジタルパスポート
  • 信毎の本オンラインショップ
  • 信毎イベント&チケット
  • 信毎オリジナルグッズ