信州FOOD記

「お葉漬け」といえば??

(左上)泰阜村で育てられている「源助かぶ菜」(画像提供:泰阜村) (右上)11月上旬収穫期を迎えていた野沢温泉村の野沢菜 (下)長野県を代表する漬物「野沢菜漬け」

紫色の大きな蕪をつける「稲核菜」。野沢菜に比べると短めです

収穫をしていた相沢いち子さん。収穫間際に良い状態になったと満足気でした

 我が家では毎年寒くなると、かつては祖母が、今は母が必ず言う一言があります。「そろそろ“お菜洗い”しなきゃ」。「大変だなぁ」という意味を込めた気持ちの表れなんだと、小さい頃から感じとってきました。

 12月になると各地でお菜洗いをする様子が信州の冬の景色の一つでした。ところが最近では、漬物を作る家庭も減っているようです。とはいえ、信州の冬の食卓には「野沢菜漬け」欠かせません。

 ある日、南信地方出身の知人に「野沢菜って漬ける?」と聞いたことがありました。すると「うちでは漬けないし、あまり食べない」と言う返事が…。これには驚きました。県内の土産物店ではどこでも目にする野沢菜漬け。長野県内ではみんなが口にしているものだとばかり思っていました。 そこで調べてみました。すると、野沢菜漬けの他にも「お葉漬け」と呼ばれる漬物が存在していました、それも一つ二つではありません。

 例えば、南信州・泰阜村で育てられているのは「源助かぶ菜」。「野沢菜は食べない」と話していて私の知人は、「源助かぶ菜」を食べて育ったに違いないと思いました。さらに、すんき漬けが名産の木曽地方には「木曽菜」、上伊那地方には「羽広菜(はびろな)」など。中信地方で食べられているものもあります。それが「稲核菜(いねこきな)」という菜っぱです。収穫が最盛期を迎えている松本市安曇地区の稲核集落へ向かいました。

 松本ICから上高地に向かって野麦街道を40分ほど走ったところに稲核集落があります。山の斜面とダム湖の間にあり、94世帯215人(松本市2016年11月調べ)が暮らすとても小さな集落です。稲核菜は今から300年前に飛騨地方から伝わったと言われています。昭和初期、「野沢菜」と「羽広菜」とともに長野県の三大漬け菜と言われ、栽培が根付いていったそうです。いまでは「信州の伝統野菜」の一つです。

 住宅と住宅の間にある畑では、ちょうど収穫作業に追われていました。相沢いち子さん(74)は、稲核集落に嫁いで以来、毎年100束ほど塩漬けにしているそうです。とれたばかりのお菜を見せていただきました。紫色のカブが付いていて、葉の部分は「三尺菜(三尺=約113センチ)」と呼ばれ、野沢菜に比べると短め。カブを入れても約70~80センチほどです。今年は雨続きの天候が影響し、生育がよくありませんでした。

 野沢菜との違いを聞くと、悪く言うと「筋っぽい」、よく言えば、「長持ちするから翌年の夏まで食べることができる」とか。長期保存に一役買っている場所があります。「稲核風穴(いねこきふうけつ)」という風穴です。山のから冷気が吹き出るため一年を通して涼しく、地元の人たちは冷蔵庫の代わりに食材の保存に利用してきました。

 漬け込みの時間が長くなると、茶色に変色します。野沢菜漬けと同じように油で炒め、おやきの具にすると美味しいそうです。相沢さんをはじめ、稲核集落の方々が作る手作りのおやきは地元の道の駅で販売されます。集落でも稲核菜を栽培する家庭は30軒ほどに減りました。相沢さんは「これを漬けないと冬を迎えられない」と笑顔で話し、手早く収穫作業を進めていました。


2016年11月21日


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