信州FOOD記

梁より高く!?~川上村のはりこしまんじゅう~

“梁より高く”お椀を使って高く跳ね上げます。水道が各家庭になかった頃、手を汚さないようにという意味もあったそうです

こんがり焼き上がったはりこしまんじゅう。中はモッチリとした食感です

一面にレタス畑が広がる川上村。夜は星空が美しいことも有名です

 日本有数のレタス産地として、また、昨年国際宇宙ステーションに滞在したJAXA宇宙飛行士の油井亀美也さんの出身地として有名な南佐久郡川上村。埼玉県境にあり、新潟県まで続く千曲川の源流がある村です。

 この村にとても面白いお饅頭があることを知り、行ってきました。佐久で高速道路を降りて約1時間。車を進めると気温がどんどん下がってきます。小海町を過ぎると長野市と比べて7度ほど低い気温になり、川上村に入るあたりから、一面のレタス畑が広がっています。早朝から収穫作業が行われるレタス。午前10時頃にはほとんど作業をしている人はいませんでしたが、そのスケールは想像以上。どこを見てもレタス、レタス、レタス!という風景でした。

 さて、この川上村はレタスなどの高原野菜の産地ではありますが、稲作には昔から向いておらず、北信の多くの地域が昔そうであったように、「粉食」が主食でした。そして根付いたのが「はりこしまんじゅう」です。“梁(はり)を越すほどに高く跳ね上げる”ことから「はりこしまんじゅう」という名前がついたそうで、その作り方にとても特徴があります。

 まず、ネギと味噌と少しのショウガを混ぜ、そこに小麦粉やそば粉を入れます(現在は小麦粉が主流ですが、昔は地元で採れるそば粉が主流だったそうです)。水で硬さを調節し、約60gほどのタネをお椀や片口に入れ、それをポンポンと跳ね上げながら形を整えるのです。私もやってみましたが、跳ね上げたタネをお椀でキャッチするのは至難の技。高く上げるのはかなりコツが必要です。

 この日、埼玉県蕨市から体験学習に来ていた小学生たちも最初は20cmほど上げるのがやっとでしたが、さすが児童たちは飲み込みが早く、梁に着くほどに高く跳ねあげている男の子もいました。そうして丸く形が整ったタネを、昔は各家庭にあった囲炉裏の灰の中に入れ蒸し焼きにしたそうです。現在は囲炉裏が無い家庭の方が多くなり、焙烙(ほうろく)やホットプレート、フライパンを使って焼き上げます。焙烙などに乗せ、お椀で押し付けて(ハンバーグのような形)平べったくして両面焼きます。

 焼き上がったはりこしまんじゅうは、見た目は灰焼きおやきに似ていますが、混ぜ込んだ味噌とネギと生姜のみのシンプルな味で、歯ごたえもあり、粉の風味もしっかりと感じる素朴な美味しさでした。体験学習の講師を務められた「森の駅マルシェかわかみ」農産物と直売所運営組合の代表・新海大二さんは、「昔、囲炉裏端で親父がポンポンと跳ね上げながら作って、それをつまみにお酒を飲んでいた。川上村ではこのはりこしまんじゅうはおやつであり、主食であり、つまみ」。

 はりこしまんじゅうと同様、そばも主食として食べられていた川上村では、粉を挽いて、良い部分はそばになり、残りの粉(川上村では“めごな”というそうです)ではりこしまんじゅうを作っていたそう。時代の流れとともに、手に入りやすい小麦粉が主流となり、現在でも作る家庭は多いのだそうです。昔から川上村の一家団らんの場ではポンポンと跳ね上げていたのでしょうか。「宇宙飛行士の油井さんもはりこしまんじゅうを食べていたはず。国際宇宙ステーションでもはりこしまんじゅうをポンポンとやって欲しかったなぁ」と新海さん。

 この日、体験した27名の小学生たちも、「高く上げたものをキャッチすると嬉しいし、楽しかった」「今まで食べたことが無い味だったけど美味しかった」と満足そうでした。現在、このはりこしまんじゅうを販売する店舗はありませんが、今後、「森の駅マルシェかわかみ」で販売できるように準備を進めているそうです。

 帰り道、新海さんの話を思い出し、無重力状態ではりこしまんじゅうのタネを跳ね上げるところを想像してしまいました。宇宙の果てまであのネギと味噌が入ったタネが飛んでいく姿を想像し、つい笑いながらの運転となりました(笑)。

森の駅マルシェかわかみ
 長野県南佐久郡川上村大深山536

2016年7月12日


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