信州FOOD記

伝えたい千曲川の味~つけば料理~

千曲川に仕掛けられた「つけば漁」で作業をする西沢社長

河川敷にあるつけば小屋。今年は10/23まで営業します

左上から時計回りで、ハヤの塩焼き、山椒味噌田楽、唐揚げ

 早朝5時15分。山から陽が昇り始める頃、指定された取材場所に向かいました。向かった先は上田市の千曲川の河川敷。ここで行われていたのが、千曲川で古くから行われている「つけば漁」です。この時期、獲れるのは「ウグイ」。ウグイは千曲川流域をはじめとする信州では「ハヤ」と呼ばれています。
ハヤは、流れが早く、水が巻くような場所にある砂利に産卵をおこなう習性があり、その習性を利用した漁が「つけば漁」と呼ばれています。その歴史はとても古く、江戸時代には確立していたそうです。

 歩いて渡れるほどの浅瀬に仕掛けがありますが、長靴で歩いてみたところ、石についたコケで滑り、また思った以上に流れが早く、さすがの私もビクビクしながらつけばに向かいました。この日、最初に上げた網には10匹ほどのハヤがかかっていました。お腹の部分が濃いオレンジ色なのが特徴のハヤ。大きさは15cmほどのものが多かったです。

 そして、つけば漁が行われる場所のすぐ近くの河川敷に「つけば小屋」があります。このつけば小屋ですが、かつて、千曲川沿いを通ると各所で見ることができました。私の地元、松代町の千曲川沿いにも子どもの頃、プレハブ小屋のような「つけば小屋」があり、子ども心にとても楽しそうに見え、“一度行ってみたい!”と思っていました。しかし、中々機会がなく…そうこうしているうちに、松代の近くからはつけばがなくなってしまいました。

 今回うかがったのは、40年ほど前からこの場所でつけば小屋を営む「鯉西(こいにし)」さん。2代目の社長、西沢徳雄さん(50)はこの道30年。西沢さんにお話をうかがったところ、バブルの時代(昭和60年頃)は上田周辺だけでも17~18軒のつけば小屋があったそうです。それが今では3軒。上田以外でも廃業するところが多いのだそうです。今は亡き先代(奥様のお父様)にはとても厳しく鍛えられたという西沢さん。「千曲川の男と呼ばれていた親父のあの厳しい教えがあったからこそ、今こうして営業していられる」と言います。

 鯉やカジカなども扱っていますが、やはりつけばといえばハヤと鮎。海のない信州では昔から貴重はタンパク源でした。今では「鮎」が有名になり、ここのつけば小屋でも主流になっていますが、元来、“千曲川といえばハヤ”だそうで、「塩焼き、天ぷら、田楽」が昔からのいわゆる“つけば料理”として知られていました。それに加え、現在では唐揚げやフライ、ホイル焼きなども人気です。鯉西さんでは、千曲川で獲れた魚をすぐに出すのではなく、井戸水の中で3日ほど泳がせてから提供しています。そうすることで、魚の胃袋がきれいになり、臭みもなくなって身が締まるのだそうです。

 今回、私は塩焼きと田楽、そして唐揚げをいただきました。塩焼きは客席から見えるところに炭火を起こし、“強火の遠火”で25分ほど焼いたもの。田楽は山椒味噌が塗られていて、フライは甘辛ダレがついていました。ハヤは初めて食べたのですが、ほのかに甘みを感じるような旨味があり、言われたように身が締まっていてとても美味しかったです。特に唐揚げは丸ごと食べられるのですが、甘辛ダレがとても合っていて、これならいくつでも食べられる!という美味しさでした。

 千曲川で獲れる魚は年々減少傾向にあり、ブラックバスなどの外来魚や川鵜が増えたこと、そして、ゲリラ豪雨などによる濁り水がその理由と言われています。西沢さんは「つけば漁、川魚は信州の貴重な文化。親父から教えられたことをただ一本気に守るのではなく、時代に応じた変化球も交えながら、次世代に繋げていきたい。そのためには外来魚や濁り水などの対応も考えていきたい」と話してくれました。

 ハヤは6月10日の網止めまで獲れ、6月下旬までの提供。6月18日にはいよいよ鮎が解禁となり、鮎料理が始まります。今年はNHK大河ドラマ真田丸の影響もあり県外からのお客さんも多いそうですが、これからの季節、夏の風物詩とも言える「つけば料理」を千曲川を眺めながら食べてみませんか?

<鯉西のつけば小屋>
 上田市常田1−5(上田駅温泉口より徒歩5分)
 TEL:0268-23-2438

2016年5月26日


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