信州FOOD記

花より団子~臥竜公園の真っ黒おでん~

「日本のさくら名所100選」にも選ばれた桜並木。まさに“桜のトンネル”です

清泉亭さんの真っ黒おでん。タマゴ(100円)、ちくわ、さつま揚げ、こんにゃく(それぞれ90円)

清泉亭の皆さん。右から2番目が女将の志田原昭子さん

 今年は例年に比べて桜の開花が早く、長野市周辺ではすっかりお花見シーズも終わってしまいました。みなさん、お花見には行かれましたか?  私は地元の松代城にはじまり、上田城、松本城、高遠城址公園、上越の高田城、須坂の一本桜めぐり、臥龍公園―と、例年になくたくさんの桜を見てきました。

 お花見といえば、花を愛でることはもちろんですが、そこはやっぱり「花より団子」、お花を見ながらの「食」や「酒」も楽しみのひとつです。お団子だったりビールだったり、日本酒だったり、「お花見といえばコレ!」というものがそれぞれあるのではないでしょうか?

 私にとっての“お花見といえば~”は「おでん」です。松代城が海津城と呼ばれていた幼少時代、桜のシーズンになると城内にプレハブの売店が出来、そこでおでんが販売されていました。夜桜を見ながら食べるそのおでんが好きだったことが影響しているのかもしれません。現在、松代城ではそのおでんは食べられませんが、今でもやはり「お花見といえばおでん」という感覚なのです。

 さて、おでんといえば有名なのが須坂市の臥竜公園の「真っ黒おでん」です。臥竜公園は「日本のさくら名所100選」にも選ばれた県内有数の名所(県内では他に小諸懐古園、高遠城址公園が選ばれています)。公園内にはソメイヨシノを中心に約600本もの桜の木があり、お花見のシーズンになると県内外から多くの観光客が訪れます。そしてお花見客に人気なのが名物の「真っ黒おでん」なのです。公園内で提供しているお店は10店舗ありますが、その中でも公園が出来た頃からある「池乃清泉亭」さんへ行ってきました。

 かつて養蚕が盛んだったころ、公園このあたりには桑畑が広がっていました。そこに水を供給するために池を掘り始めたのが昭和4年。その翌年、公園内に清泉亭ができました。当時からこんにゃくのみでしたが、おでんはあったそうです。それから87年。公園内で2回の引越しをしたお店は、具材も増やしながら真っ黒おでんを続けてきました。

 鍋の中の具材が透けて見えないほど真っ黒な出汁で煮込まれたおでん。取材に伺った日はタマゴ、ちくわ、さつま揚げ、こんにゃくがありました。食べてみるとシンプルながら、出汁が中まで染み込んでいてとても美味! かといって、見ための色ほどの味の濃さは感じませんでした。女将の志田原昭子さんにお話を伺いました。

 お父様が広島県の出身なので、広島の「いりこ」を使って出汁をとり、地元須坂のお醤油を使って味をつけているそうです。驚いたことに、お花見シーズンにはなんと、1日6,000本ものおでんが売れるそう。一つ一つ串に刺して作っているので、その数を聞いて気が遠くなりそうでした。串に刺した具材を厨房でじっくり煮込み、店先でもコトコトと火を入れて販売します。煮詰まらないように一日中火加減や出汁の濃さも調節しているそうです。「のれんを守り続けるということはとても大変。母の味にはまだ届かないけど、これからもこの場所で、真っ黒おでんを続けていきたい」と話していました。かけてきた手間暇こそが、多くの人に愛され続けている秘訣だと思いました。

 おでんはお花見シーズンのみならず、通年で販売。秋になると、これも人気の大根と牛スジがライナップに加わるそうです。園内には、「日本の名松100選」に選ばれている、龍が臥したように見える松の木があります。アヤメやツツジ、アジサイなどの花々、隣には動物園もあり、一年を通して四季折々の風景を楽しむことができる臥竜公園。名物の真っ黒おでんをぜひ食べてみてください。10店舗あるので“おでんの食べ比べ”も楽しそうですよ。

2016年4月20日


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