信州FOOD記

「男の祭り」と「女の祭り」~諏訪御柱祭り上社山出し~

鈴なりに男衆が乗っためどでこ。左右に振りながら前に突き進んでいきます

矢嶋家の「お客」。たくさんの料理とご家族の笑顔が最高のおもてなしです

「天よせ」は各家庭によって味や形も様々。矢嶋邸ではごまドレッシングをかけて食べるのがオススメなのだそう

 今年は、諏訪大社の上社と下社でそれぞれ7年に一度行われる「諏訪御柱祭」の年です。御柱祭とは、諏訪大社で寅と申の年に行われる宝殿の新築と、社殿の四隅にあるモミの大木を建て替えるお祭りのことで、正式には「式年造営御柱大祭」といいます。長野県の指定無形民俗文化財に指定されているだけでなく、「天下の奇祭」ともいわれています。先週土曜日(4月2日)、初日の「上社山出し」に行ってきました。実は今まで御柱祭にいったことがなく、とても楽しみでもありました。

 原村の綱置場から、上社本宮の柱4本、前宮の柱4本の合計8本の柱が出発します。木遣りの声を合図に約13kmの道のりを、柱についた「男綱」「女綱」を引っ張って歩きます。柱からは「めどでこ」と呼ばれる角のような木が突き出しており、そこに鈴なりに氏子たちが乗って「ヨイサ!ヨイサ!」と声を合わせ突き進んでいく光景は圧巻。柱が通る道は意外に細く、見どころのひとつ「穴山(あなやま)の大曲がり」はクランクのように道が曲がっていて、大きな柱を通過させるのも至難の技。今回、ご縁があって、綱を少しだけ引かせて頂いたのですが、穴山の大曲がりは大勢で引っ張っているにもかかわらずかなりの力が必要で、逆に戻されたり、位置の調整をしながら何とか曲がり切りました。

 さて、この御柱祭ならではの風習があるのをご存知ですか? それは「お客」という風習です。「お客」とはお祭りの見物客のことではありません。主に御柱が通る街道沿いのお宅が、お祭りに来てくれた方々に食べ物や飲み物をふるまう、「“お客”をもてなすこと」を言います。見ず知らずの方も「どうぞいらっしゃい」と家に招き入れ、おもてなしをするお宅も少なくないというから驚きです。以前からこの風習のことは耳にしており、どんな様子なのかとても興味がありました。今回、友人の知人宅がこの「お客」をやっているということで伺ってきました。

 訪れたのは茅野市の「矢嶋邸」。御柱街道からは1本それているため、基本的には親戚や知人、その知人などをもてなしているとのこと。それにしてもすごいご馳走が並んでいてびっくり。いなり寿しや巻き寿司、お刺身、おはぎ、サンドイッチ、唐揚げや春巻き、筍煮など手作りのものを中心に20品近くのご馳走が並んていました。諏訪名物のワカサギの南蛮漬けや、このあたりでは催しごとに各家庭で必ず作るという「天よせ(寒天よせ)」もありました。

 家主の矢嶋浩行さんはもちろんお祭りに参加しており、ここには奥様、お母様、お祭りからは既に引退したお父様、そしてお嫁に出たお姉さま2人も手伝いに来ていて、奥様は何日も前から夜中まで仕込みをし、 お母様は朝3時に起きて準備をしたそう。お母様の矢嶋マキ子さんは「男衆は朝から晩までお祭りにかかりっきり。年寄りでもいなければ男手がなくて本当に大変。御柱を曳くのが男の祭りならば、この“お客”は女の祭り」と話してくれました。お料理を食べながら、引退したお父様がケーブルテレビの中継を見ながら解説をしてくれました。「まったく今の奴らはへたくそ!」なんていう話も…。これはどこのお宅も同じらしいです(笑)。

 「男の祭り」と「女の祭り」、両方体験できた貴重な一日となりました。帰りにはなんとお土産まで。柱の形をした和菓子で、来てくれた人に毎回渡しているそうです。まさに「大盤振る舞い」ともいえるこの「お客」。諏訪の方々の心意気と懐の広さを感じる風習でした。ただ、全ての家でやっているわけではありませんのでご注意ください。

 今週末には下社の山出し、木落としが行われます。 下社の木落としは最大傾斜35度、斜面も100mとこちらも見ごたえがありそう。見物チケットは既に売り切れていますが、パブリックビューイングやケーブルテレビの中継でも御柱らしさを体験できるのではないでしょうか。

2016年4月08日


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