信州FOOD記

信州FOOD記~おわりに

2017年11月飯田市伊豆木地区にて。軒先きにところ狭しと吊るされている市田柿

昔は蚕小屋だった建物で市田柿が作られていました。障子越しに原風景が広がります

お茶を飲みながらの市田柿。師走を感じるひと時です

 今年も残すところ1週間あまりとなりました。今年も県内外、色々なところを巡らせていただきました。先月(11月)、取材の帰りに飯田市の伊豆木地区に立ち寄りました。昔ながらの“柿暖簾(かきすだれ)”を見ることができると聞いたからです。

 12月に入ると、市田柿の販売がはじまります。毎年心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。市田柿といえば、下伊那郡高森町を中心に南信州が誇る名産品。2016年にGI(地理的表示)にも登録されました。オレンジ色の小ぶりな市田柿、年末のお茶請けとして食べている方も多いのではないでしょうか。以前は景色がオレンジ色に染まるほど、南信州の彼方此方で軒先きなどに吊るされた「柿暖簾」を見ることができました。しかし、最近は車で走っていても“オレンジ色”が視界に入らなくなってきています。昨今、国内だけでなく、海外にも輸出されている市田柿、販売ということを考えると衛生面など色々と規制が出てきているようです。

 そんな中、伊豆木地区に入ると驚くべき光景が。ほとんどのお宅で軒先きや納屋の2階にところ狭しと柿が吊るされています。高台からその景色を眺めると、オレンジ色の風景が広がっていました。紅葉も終わりを迎える時期でしたが、色づいた木々と柿暖簾の色が見事なコントラストを描いており、圧巻でした。ちょうど、柿暖簾の調整をしていた方にお話を伺うと、「この光景も含めて南信州の市田柿は財産。でも手間がかかるから私の代までかなぁ…」と。1000個を超える柿を一つ一つ皮を剥き、紐にかけて吊るす。この作業はとても大変です。また、若い世代は集落を離れている人も多く、この光景もこの先何年見ることができるのか、引き継いでいくことの難しさを話されていました。

 「後継者問題」はこの市田柿に限らず、多くの取材先で耳にする話題でした。県内の山間地域だけでなく、市街地に近いところでも遊休農地が広がっています。生活スタイルが変化し、農産物、郷土料理、特産品など、これから次世代へ繋いでいくことは容易なことではありません。

 信州には優れた食文化が多く存在しています。しかし、当たり前のようにそこにあり、私もその素晴らしさに気づかずに過ごしてきたものもたくさんありました。また、「昔はあんなものあったけど、最近なくなってしまったなぁ…」と思うものや、若い頃は「こんなもの食べたくない」と思ったものの良さに歳を重ねるにつれてあらためてその良さに気づいたり…。時代とともに薄れてしまうのは仕方ないことなのかもしれませんが、その素晴らしさがこれからも長く“その地域”で、“その地域の人たちに”引き継がれることを願ってやみません。私も、これからも信州の素晴らしい「食(Food)」や「風土」を発信していけたらと思います。

 さて、2014年1月から始まりましたこの「信州FOOD記」、今回が最終回です。時折、お目にかかった人から「読んでます」とか「こんな食べ物があったんですね」と声をかけて頂くととても嬉しかったです。4年間、読んでいただき、ありがとうございました。それでは、これからも皆さまに多くの“口福”がありますように。

中島麻希

2017年12月27日


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