信州FOOD記

今が旬!優れた土が作る2つの伝統野菜~飯山市~

<上>常盤ゴボウの畑で藤沢夫妻。今年の収穫も間も無く終わります <中>藤沢さんの作った常盤ゴボウ。太くてしっかりしています <下>藤沢さんのお宅で出して頂いた常盤ゴボウのお料理。シンプルな食べ方がゴボウの美味しさを引き立てます

<上>収穫したばかりの坂井芋の株を持つ小林さん <中・左>堀り起こすにも力を要します <中・右>土がついた状態の株 <下・右>土をとると大小の芋がたくさんついています <下・左>株からはずし、“毛羽とり”をして出荷します

「イカの皮を使った煮っころがし」。 味付けは出汁としょうゆ、酒、みりん、砂糖に“イカの皮”。イカの皮から出る出汁がより一層坂井芋の美味しさを際立たせます

 毎年、暖房器具を出す時期になると食べる頻度が高くなる食べ物があります。“根菜”です。ゴボウ、レンコン、サトイモなどなど、今年も美味しい時期がやってきました。

 私は根菜が大好物なので、取材などで県内を回る際、見つけるとつい買ってしまいます。色々な根菜を食べる中で、ある地域で買った根菜がとても美味しく、以来、年末にかけて何度も買いに車を走らせてしまいます。それは、飯山市の2つの伝統野菜「常盤ゴボウ」と「坂井芋」です。

 まずは常盤ゴボウのお話を伺いに飯山市常盤の小沼集落へ。JAながの常盤ごぼう部会の藤沢正美さん(67)のお宅へうかがいました。藤沢さんは昨年、常盤ゴボウの品評会で最優秀賞を受賞した名人でもあります。藤沢さんは今年は20アールほどのゴボウを植えしましたが、6月の水害で10アールもダメになってしまったそうです。

 「気温が上昇していく時期に水害にあうと腐ってしまうため、致命的なんです」と藤沢さん。取材にうかがった数日前にも台風による大雨がありましたが、地熱が低くなっているため6月ほどの影響はなかったようです。残った10アールのゴボウの出来は上々とのこと。収穫したゴボウを見せてもらいましたが、太くてまっすぐでしっかりしたものがたくさんありました。

 常盤ゴボウの歴史は長く、300年ほど前、江戸時代中ごろからこの地区で生産されてきたそうです。地元のJR飯山線・信濃平駅から、貨車でたくさんのゴボウが西へ東へと出荷されている時期もありました。富山の鱈汁には欠かせないものだったそうです。JAながのによると、2016年の常盤ゴボウの出荷量は6.7トン。そのほとんどが上越と千葉の市場へと向かいます。今年の出荷量も昨年並とのことです。

 柔らかくてアクが少ないながらも香りが強いというのが常盤ゴボウの特徴。藤沢さんの奥様ふみ江さん(64)に美味しい食べ方を聞いてみたところ、1センチほどの輪切りにしたものを一度茹でこぼしてから煮るのが美味しいと言います。味付けはしょうゆ、酒、みりん、砂糖で。シンプルだけど飽きがこないのだそう。

 この地域では「箒(ほうき)」を作る家が多いのですが、ふみ江さんは「昔、箒を作りながら食べたゴボウ料理が忘れられない」と言い、作り方を教えてくれました。太く育ちすぎたゴボウは空洞ができてしまいますが、そこに肉を詰め、作業小屋のストーブの上でコトコトと煮るのだそう。「埃が舞うような小屋で煮るもんだから嫌だな~と思いながらも美味しくてね」と話してくださいました。正美さんも「日本酒をチビチビと飲みながら食べるのがまた美味かった」。話を聞くだけでも美味しそうで私も食べたくなりました。

 次に、千曲川を渡って飯山市坂井地区へ。ここは同じく伝統野菜の「坂井芋」の産地です。この地区で生まれ、坂井芋を生産する小林勇希さん(40)は、もともとJAへ出荷される農産物を運ぶ仕事をしていました。地域をまわる中で、高齢化などで坂井芋の生産者が減っていることが気になったと言います。自分でやってみようと思い立ち、5年ほど前に坂井芋作りをはじめました。坂井芋は連作ができないため、40アール持っている畑の中で毎年10アールの坂井芋を作っています。

 坂井芋の特徴はなんといってもホクホクの食感。「見た目はよくないけれど、この味が自慢」と小林さん。JAの方にお話を聞いたところ、以前、坂井芋の形をよくしようと、埼玉県から形の良いサトイモの苗を買ってきて植えたそうです。ところが、2年目、3年目にはすっかり坂井芋の形になってしまったのだそうです。また、坂井芋の苗を飯山市内の別のエリアに植えてみたところ、全く違う食感、味になってしまったとのこと。何とも不思議。坂井芋は坂井の土でしかできないものなのです。

 おすすめの食べ方はやはり「煮っころがし」。小林家ではシンプルに坂井芋だけを煮て食べることが多いそうですが、他の方に聞いてみたところ“イカの皮と煮る”という方が何人も。イカの皮? 私はイカとサトイモの煮物はよく食べますが、イカの皮というのは初耳でした。イカの皮を干した乾物がこの地域では売られており、それを一緒に煮た「煮っころがし」が“坂井地区の味”なのだそうです。

 虫がつきにくくて病気も少なく、あまり手がかからないというサトイモ作り。「掘るのはとても大変」と小林さん。寒さにも弱く、掘ったあとの管理が難しいそうです。これから年末にかけて、坂井芋の生産者さんたちの最も忙しい時期となります。昨年の生産量はJAの出荷実績で26トン。こちらも年末商戦として主に東京の市場へ向かいます。

 常盤ゴボウも坂井芋も、需要に比べて生産量が追いつかないのが現状だそう。ほぼ県外の市場に出てしまうので、藤沢さんも小林さんも「これからは地元の消費を増やしていきたい」と話していました。年末に向け、食卓に上がる機会が増える根菜。飯山の優れた地質が作る二つの根菜を、皆様もぜひ味わってみてください。

2017年10月30日


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