信州FOOD記

年に一度のお供え菓子、時を経て地域の名産品に~渦巻きかりんとう~

<上>店頭に並ぶ「犬石ものがたり」(一袋:税込み280円) <下>たんぽぽのみなさん。現在24名の方々が働いています。この日、お店にいた皆さん。右から2番目が小池社長

「お母さんの味処たんぽぽ」さんで並ぶ人気の加工品。おやきはとにらせんべいは特に人気だそうです

<上>ほんのり甘く、さっくりした食感が後を引く渦巻きかりんとう「犬石ものがたり」 <下>お盆には欠かせない精霊馬と精霊牛は、必ず地元産の野菜で作ります

 連日の猛暑の中、ふと気づくと7月も終わろうとしています。8月に入ると少しずつ、お盆の準備が始まります。我が家も8月に入るとお墓の掃除に行き、白樺の皮を乾燥させたカンバを用意します。これは北信地方で墓前や玄関先で迎え火や送り火を焚く時に使用するもの。ほかにも、必ずキュウリとナスで精霊馬と精霊牛を作っています。

 迎え盆の日(13日)にはおやきや野菜を中心とした天ぷらがテーブルに並び、先祖をお迎えしますが、長野市の南西部に迎え盆には欠かせないお供え菓子があると聞き、調べてみました。

 長野市篠ノ井の信里地区。この地区の「犬石」という集落で、お盆のお供え菓子として親しまれているのが「渦巻きかりんとう」です。生地を巻いたものを切って揚げたもので、切り口がぐるぐると渦巻き状に見えるのです。この渦巻きかりんとうを求めて、長野市篠ノ井山布施の「お母さんの味処“たんぽぽ”」さんへ伺いました。

 「たんぽぽ」は、地元産農産物の直売の他、おやきやお惣菜など手作りの加工品が並ぶ人気のお店。美味しそうなおやきや、にらせんべいなどのお惣菜が色々と並んでいます。渦巻きかりんとうを探すと、お惣菜コーナーの近くにありました! 「犬石ものがたり」という名前で売られています。社長の小池峰子さん(78)にお話を伺いました。

 平成4(1992)年、小池さんが中心となり、地域の農家の女性たちで農産物直売所「たんぽぽ」をつくりました。農村女性の地位向上や少しでも収入を得られるようにとのことから。そして、自身の思い出の味でもあった「渦巻きかりんとう」を商品として販売しようと考え、犬石地区の方にお願いして作ってもらったのが「犬石ものがたり」でした。

 小池さんが小さな頃、各家庭ではお盆になると、お供え菓子として渦巻きかりんとうを作っていたそうです。砂糖が貴重な時代、小池さんも年に一度の楽しみでもありました。物心がついた時には毎年当たり前のようにあったそうなので、歴史はかなり長いのでしょう。しかし、「たんぽぽ」が出来たころには、信里地域でお盆に渦巻きかりんとうを作るという風習はほぼなくなってしまっていました。小池さんは、思い出とともにあり、地域に受け継がれてきた渦巻きかりんとうを残したいと、「犬石ものがたり」を作ったそうです。

 たんぽぽを開設して2年ほど後、直売所事業だけでなく、食堂営業やお惣菜などの加工品販売も始めました。その時、この「犬石ものがたり」も「たんぽぽ」で製造するようになりました。徐々に人気も高まり、現在では通年を通して人気のお菓子となりました。現在では長野市内のスーパーなどでも販売され、年間1万3000袋ほど製造しています。

 小池さんが昔食べたものは、小麦粉に砂糖を混ぜて揚げただけの素朴なかりんとうだったそうです。今ではより美味しく食べられるように、ゴマを練りこんだり牛乳や卵も使ったりと、さらに親しみやすい味になりました。帰宅後、さっそく渦巻きかりんとうをいただいてみました。ほんのり甘く、なんだか遠い昔に食べたような感覚に陥りました。たぶん、祖母か母かが家で作ってくれたお菓子の味です。この渦巻きかりんとう一口で、小さな頃の記憶も鮮明に蘇りました。楽しかった「おやつの時間」…。「1つ食べ始めると止まらないよ」という小池さんの言葉、納得です!

 信里地区でお盆に欠かせないお供え菓子だった渦巻きかりんとう。現在は信里地域を代表する人気のおやつです。みなさんの地域ではどんなお盆の風習がありますか?

2017年7月28日


バックナンバー

楽しむ

エンタメコラム
特選お役立ちコラム
中島麻希 信州FOOD記
成沢篤人 それはさておき、ひとまずワイン
横山タカ子 暮らしの調味料
東京アート日和
信州スポーツ
信州お天気手帖
今日の運勢
イベント情報
イベント情報投稿
映画館情報
書籍・CDランキング
パズル
グローバルメニュー
  • 信毎デジタルパスポート
  • 信毎の本オンラインショップ
  • 信毎イベント&チケット
  • 信毎オリジナルグッズ