汐留鉄道倶楽部

半分、昭和?

2018年12月07日

 (上)明知鉄道の急行「大正ロマン号」として運行する「アケチ10形」=2018年10月、岐阜県恵那市、(下)明知鉄道「アケチ10形」のリニア中央新幹線をイメージしたラッピング車両=18年10月、岐阜県恵那市

 (上)明知鉄道の新型車両「アケチ100形」=2018年10月、岐阜県恵那市、(下)岐阜県恵那市岩村町の商店街で開かれた「ふくろうまつり」の日は、「五平餅」の店舗(左)で購入者の行列ができた=18年10月、岐阜県恵那市

 大ヒットしたNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」に登場する「ふくろう商店街」が沿線の岐阜県恵那市岩村町の商店街で撮影された効果に沸いているのが、恵那―明智(ともに恵那市)の25・1キロを結ぶ第三セクターの明知鉄道だ。ドラマに登場した昭和時代の高度経済成長期の雰囲気を求め、JR中央線から恵那駅で乗りかえて明知鉄道で最寄り駅の岩村へ向かう旅行者が続出しているのだ。

 地元の商工会議所などでつくる協議会は「半分、青い。」の岐阜県への経済波及効果が32億7千万円に上ると推計。私が訪れたのは撮影された商店街で昭和時代の雰囲気を再現したイベント「ふくろうまつり」が開催された日だけに、恵那駅で乗った1両のディーゼル車両は大勢の乗客が立っているほどの混雑となった。

 そんな光景は、終着駅の明智の駅名とは異なり、社名は「明知」と「知」の漢字に「日」が付かないことが暗示する日の目を見ない経営低迷を忘れさせるほどだ。赤字を垂れ流して旧国鉄の第1次廃止対象路線に入り、岐阜県や恵那市などが出資して設立した第三セクターの明知鉄道が1985年11月に引き継いだ後も赤字が慢性化している。

 ところが、干天の慈雨となったのが「半分、青い。」で盛り上がった観光ブームだ。商店街では永野芽郁さんが演じる主人公が焼く場面もあった「五平餅」が人気を集め、主人公の親友の実家の洋品店という設定で撮影された「やすだや洋品店」も名所として脚光を浴びた。店主の鈴木浩之さんは「ドラマを見た多くの観光客が来てくれてありがたい。明知鉄道で訪れる人も多く、乗客数が増えたようだ」と目を細める。

 ただ、明知鉄道も「半分、青い。」で一色かと言えば、どこか及び腰で「半分、昭和。」というスタンスに映る。永野さんの姿が大きく装飾された「半分、青い。」をアピールするラッピング列車がドラマ開始の今年4月に登場したが、半年後に姿を消した。

 しかも看板列車は大正時代をイメージした急行「大正ロマン号」と、昭和時代よりさらにさかのぼる。終点の明智駅の近くにある「日本大正村」と引っ掛けているためだ。

 運行時は2代目のディーゼル車両「アケチ10形」を4両編成で走らせ、うち1両は地場産品を生かした料理を楽しめる「走るレストラン」として運用する。秋は地元で採れたキノコを味わえる「きのこ列車」、冬は滋養強壮や疲労回復に良いとされるジネンジョを提供する「じねんじょ列車」といった具合で、予約もおおむね堅調に推移している。

 確かに日本大正村を訪れる旅行者が、移動中の列車内から大正ロマンの空間を提供する意義は理解できる。しかしながら、「半分、青い。」に登場した昭和時代の雰囲気を追体験したい観光客が乗るのには感情移入しにくいのではないか。

 そこで、提案したい。「半分、青い。」の効果をできるだけ長続きさせながらも、依存するのを防ぐ方法として「時代絵巻」のような装飾列車を走らせてはどうだろうか。大正、昭和、平成、そして来年5月に迎える新元号と時代ごとの装飾を用意するのだ。

 そう記すと「赤字経営なので、ない袖は振れない」と難色を示されそうだが、大掛かりな投資は必要ではない。なぜならば昭和を除く三つの時代の“代表選手”はそろっており、大正時代は大正ロマン号、平成時代らしいのは17年4月に運転を始めた新型車「アケチ100形」で、新元号を迎えるのにふさわしいアケチ10形のラッピング列車もあるからだ。この車両の先頭部は、2027年に東京・品川―名古屋で開業予定のリニア中央新幹線をイメージして白地に青いラインを入れている。

 次世代の高速鉄道がリニア中央新幹線ならば、昭和時代を象徴する代表格は東京五輪が開かれた1964年に開業した東海道新幹線の初代型車両「0系」だろう。アケチ10形に0系のオリジナル塗装を再現すれば、車体側面が白をベースにしながら窓の回りと上部、下部は青く塗られて「半分、青い。」色合いとなる。おあとがよろしいようで。

 ☆大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)共同通信社福岡支社編集部次長。共同通信配信の2019年新年原稿で「昭和レトロ―地方創生の起爆剤に」のタイトルの記事を執筆し、恵那市岩村町の商店街も紹介しました。年明けの紙面をお楽しみに!


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