汐留鉄道倶楽部

小田急ロマンスカーを1日で乗り尽くす

2018年7月06日

 (上)新宿駅で、折り返しの「スーパーはこね13号」となったLSE。たくさんの人がカメラやスマホを向け、名残を惜しんでいた。(下)VSEの展望席。車内から見ても窓枠の曲線美が素晴らしい。

 (上)初めて見たときは「名鉄のパノラマカー7000系(既に引退)そっくり」と感じたGSEだが、そんな印象が吹っ飛ぶ圧倒的な存在感があった。(下)新宿駅のロマンスカー発着ホームの壁に描かれた歴代ロマンスカーのイラスト。LSEの下には引退年の「2018」が書き込まれるだろう。

 ロマンスカーといえば、新宿と箱根、江ノ島を結ぶ小田急電鉄の看板特急列車である。最新鋭の70000形GSEがデビューした3月17日から、最古参の7000形LSEが定期運行から引退する7月10日まで、30000形EXE(リニューアル車のEXEαを含む)、50000形VSE、60000形MSEを合わせて5形式のロマンスカーが運行。

 沿線住民歴15年超の筆者は、LSEにお別れの乗車をするだけでなく、5形式すべてを1日で乗り尽くそうと思い立った。

 まずは5形式をうまく乗り継ぐプランを考える。せっかくなので、前面展望席があるLSE、VSE、GSEは展望席に座りたい。インターネットで展望席の空席状況を調べると、午前11時にVSEで新宿から箱根湯本まで行き、1時間半ほど滞在してGSEで新宿に戻ると両列車で展望席が確保できることが判明。その前後に残り3形式の乗車を組み合わせ、スケジュールはばっちり整った。

 6月29日、5枚の特急券を手にまずは本厚木駅へ。トップランナーは同駅始発のLSE「さがみ70号」新宿行きだ。LSEはパーミリオンオレンジとグレーのロマンスカー伝統の塗り分けで、1980年に運行を開始した。

 さすがに引退間際の人気で展望席は予約できなかったが、そのすぐ後ろの席でも前方の視界は十分。背もたれが後ろに倒れるのと同時に座面が前にスライドする「簡易リクライニングシート」がいかにも「昭和」を感じさせる。

 8時57分発で通勤時間帯はすぎており、乗客は鉄道ファンとおぼしき人がほとんど。3月に完成した複々線を行き交う通勤電車を見ながら、約45分で新宿駅に着いた。

 非日常を演出するロマンスカーから降りると、通い慣れた新宿駅も“旅先”と錯覚してしまうから不思議だ。改札内の「ロマンスカーカフェ」で時間をつぶし、次は小田原までノンストップの「スーパーはこね17号」箱根湯本行きのVSEに乗車。美しい流線形の先頭車両の、前から2番目の展望席に座った。

 LSEにはあった前面ガラスの中央の窓枠がなくなり、視界がさらに開けた印象を受ける。デビューから13年たってもシルキーホワイトのボディーは古さを感じさせない。なめらかな走り、シートの座り心地もLSEより格段に向上。期待したほどのスピード感はなかったが、1時間半足らずで箱根湯本に到着した。

 さらに旅行気分は高まり、いよいよGSEに初乗車。期せずしてLSEからVSE、そしてGSEと展望車の“進化”をたどることに。赤に近いローズパーミリオンの車体はピッカピカ。VSEより角張った印象で、側面の窓もさらに大きくなった。

 前面窓の左右のピラー(窓柱)はVSEより細く見える。車内は昭和の臭いがしたLSEとは違い、新車の香りに満ちていた。先頭車両は座席上の荷物棚がなく、開放感は抜群。列車というより、航空機に乗ったような感覚だ。

 GSEの「はこね22号」新宿行きは、箱根湯本を13時48分に発車した。今度は展望席の最後部(といっても前から4列目)。小田原では先頭車両の真上にいる運転士から「先ほど梅雨明けが発表されました。大きな窓から、青空と沿線の風景をお楽しみください」と旅心をくすぐるアナウンスがあった。

 座席はVSEより厚みが増し、より快適に。下りのLSE、VSEとのすれ違いもフロントビューで堪能し、一路新宿へ。代々木上原を出たあたりで「ムーンライト・セレナーデ」のBGMが流れ出し、ほどなくして新宿に戻ってきた。

 この日2度目の新宿から、16時40分発のMSE「さがみ73号」本厚木行きに乗車。2008年デビューのこの形式は、ロマンスカーで初めて地下鉄(東京メトロ千代田線)に乗り入れた。

 筆者も仕事で疲れた時、自らへの「ご褒美」として千代田線の表参道から利用することがある。鮮やかなフェルメール・ブルーの外観に、シックな木目調の車内は落ち着きがあって好感が持てる。

 5分ほど遅れてこの日2度目の本厚木に到着。しばらくすると下りのLSE「はこね47号」が、前照灯から強烈な光を放ちながらやって来た。春夏秋冬、ロマンスカーの中で最も多く撮影してきたLSEにカメラを向けるのもこれが最後と思うと感慨深い。目にもしっかりと焼き付けた。

 乗り尽くしを締めくくるのは1996年デビューのEXE。平べったいフロントマスク、ブロンズ色の車体は地味だが、クッション性が高いシートの座り心地はロマンスカー随一。移動手段としては申し分ない。本厚木17時55分発の「はこね32号」はシルバーに輝くEXEαではなく、旧仕様のEXEだった。

 これで5形式すべてに乗車。3度目の新宿に向かう気力、体力はなく、自宅最寄りのロマンスカー停車駅、新百合ケ丘で下車した。まだ明るさが残る18時20分。LSEで本厚木を出発した朝から、待ち時間も含めると約9時間半。ほどほどの達成感と、それを上回る疲労感を覚えつつ、マニアック過ぎる旅を終えた。

 ☆藤戸浩一 小田急の今年最大のトピックスは、3月の複々線化完成とそれに伴うダイヤ改正。多摩線利用の筆者にとっては、同線から千代田線まで直通する急行がまさかの全廃となったことで通勤時の乗り換え回数が増えてしまった。


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