汐留鉄道倶楽部

撮り鉄の“聖地”に行ってみた

2018年6月22日

 ヒガハスを通過する「カシオペア紀行」

 ヒガハスに集まった撮り鉄たち

 「ヒガハス」。この言葉にピンときた人は、かなりの撮り鉄事情通に違いない。ヒガハスとは、埼玉県蓮田市にある東北線(宇都宮線)の撮影スポットのニックネームで、東大宮駅と蓮田駅の間に位置するため名付けられた。列車が水田の真ん中を一直線に駆け抜ける風景が印象的だ。

 かつてはヒガハスにも特急や急行が頻繁に行き交っていた。その姿を写真に収めようと、当時「鉄道マニア」と呼ばれていた撮り鉄たちが通い、ここで撮影された力作の数々が鉄道本を飾った。撮影スポットとしては定番中の定番だった。

 あれから数十年。東北線を走る優等列車の大半が廃止された今も、ヒガハスは撮り鉄の絶大な人気を誇る“聖地”だ。先日、無性に行きたくなってヒガハスに初めて行ってみた。

 昼下がりに東京駅を出た東北線の普通電車は、約40分で蓮田駅へ。ちょっと出掛けるには、遠くもなく近くもない適度な距離だ。周囲に撮り鉄っぽい人は見当たらなかった。「あわよくばヒガハスまで案内してもらおう」と思っていたので、少しがっかり。おそらく皆さんはもっと早く午前中から現地入りしているのだろう。

 駅前ロータリーには観光スポットの案内板があった。どんな名所があるのかと目をやると、貝塚や石碑、沼などと並んでヒガハスが紹介されていた。添えられている写真は、もう東北線には走っていない湘南色の115系だった。ヒガハスがかなり以前から「はすだ観光協会」に認められた名所だったことが読み取れる。

 さて、事前にチェックした撮影地ガイドによると、蓮田駅からヒガハスまで徒歩20~30分。この日は強い日差しが照りつけ、蒸し暑く、じっとしていても汗がしたたり落ちてくる。2リットルのペットボトル飲料を確保し、ヒガハスに向けて出発した。

 汗が目に染みるし、荷物の重みが肩にずっしりくるし、迷子にならないかと不安がよぎるし…。なんだろう、この感覚。せっかくの休みを使って楽しみに出掛けたのに、まるで苦行のようではないか。気を取り直して「楽しいことだけ考えて歩こう」と自分に言い聞かせたところで、ようやく目印の踏切が見えてきた。

 踏切の先には、筆者が少年時代に鉄道本の写真を見て「いつか行きたい」と憧れた「蓮田の田んぼ」が広がっていた。「これがヒガハスか!」。喜びで疲れや暑さが吹き飛ぶほどではなかったものの、到着しただけで達成感が湧いてきた。

 数百メートル四方の広大な田畑のあぜ道を見渡せば、大勢の「同業者」が点在し、思い思いの場所に陣取っていた。ほとんどの人は低い位置に三脚をセットし、折りたたみいすに座り込んで構えていた。きっと田んぼの緑を強調した構図を狙っているのだろう。

 この日は夕方に走る団体列車「カシオペア紀行」を目当てに、筆者が到着した後からも続々と撮り鉄たちが集まってきた。そこそこの人数になったが、のどかな空気が流れていた。

 緑に囲まれて、まったりとひなたぼっこ。何本もの普通電車が行き来し、たまに貨物列車や特急も通過した。刻々と変わる天気や太陽の位置に合わせてカメラの設定を微調整するので、飽きる暇はない。

 そうこうするうちに、主役の「カシオペア紀行」がやって来た。撮影しながら、周囲のシャッター音もよく聞こえる。通り過ぎてしまえば、あっという間の出来事だった。この瞬間のために、これだけ多くの撮り鉄が何時間も待ち構えていたわけで、そう考えると不思議だ。

 ヒガハスを走る「ネタ列車」の数が減ったことで、1本あたりの価値が高まってきたということか。撮り鉄の“聖地”は健在どころか、ますます勢いを増しているように感じた。

 ☆寺尾敦史(てらお・あつし)共同通信社映像音声部。ヒガハスで蚊に刺されました。これからの季節、撮り鉄をするなら虫除けの使用をお勧めします。


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