汐留鉄道倶楽部

港町KOBEのライバル物語

2018年6月08日

 電車がひっきりなしに行き来する三ノ宮駅。ちなみに私鉄や地下鉄は「ノ」のない「三宮」を使っている

 神戸駅下り5番ホームから見た「0キロポスト」。東海道線の始点はもちろん東京駅、山陽線の終点は関門海峡を越えた門司駅

 ライバル―。同じぐらいの実力の人間同士が競い合い、互いに切磋琢磨して成長する姿は美しい。人間に限らず、野球やサッカーのチーム、学校や企業、都市や国、さまざまなライバルが世の中には存在する。今回は港町・神戸のライバル、三ノ宮駅と神戸駅のお話…。

 神戸は150年前の1868年に開港、横浜と並ぶ国際港として日本の交易を支えてきた。鉄道が初めてお目見えしたのは1874年。新橋―横浜間に次ぐ区間として京都―神戸間が開通、三ノ宮駅、神戸駅が同時に生まれた。

 官設鉄道は京都から東へ延伸、東海道線となった。一方神戸から西は山陽鉄道という私鉄が線路を延ばし、明治末期に国有化されて山陽線となった。だから神戸駅は東海道線の終点、山陽線の始点であり、駅構内には山陽線の始点であることを示す「0キロポスト」が立っている。

 造船業を中心とした工業地帯も近かったので、隣接する新開地一帯は飲食店や映画館が立ち並ぶ一大繁華街として大いに栄えた。町の名前が看板に掲げられて何の不思議もない。

 だから関西に縁のない人は「えっ? 神戸の中心って神戸駅じゃないの」と思われるかもしれないが、現在、1日の乗車人員数で比べると三ノ宮駅の方が圧倒的に多い(三ノ宮約12万3千人、神戸約7万人、2016年度=JR西日本)。

 私鉄や地下鉄、新交通システムとも接続するターミナルであり、周囲にはオフィスビルが林立、神戸市役所も駅の南側に位置している(兵庫県庁は両駅の中間にある元町駅が最も近い)。この勝負、名実の「名」が神戸駅、「実」が三ノ宮駅というところか。

 両駅を巡って面白いエピソードを一つ。1953年、京都―博多間に戦後初めて特急「かもめ」が走ることになったのだが、神戸の停車駅をどうするかが問題になった。それぞれの地元が自駅の停車を主張、とはいえスピードアップのために二つの駅に連続停車させるわけには行かず、結局「下りは三ノ宮駅、上りは神戸駅」という折衷案になった。

 「阿房列車」で知られる作家、内田百間(うちだ・ひゃっけん、「間」は間の日が月という字です)は、運転初日の乗車体験を記した「春光山陽特別阿房列車」(「第二阿房列車」所収)の中で、東海道線、山陽線の起終点である神戸駅を「片道だけにしろ通過駅に扱つたのは、鉄道と云ふものの姿から考へてよろしくない」と主張。そして最後に驚くべき提案をするのだが、それは読んでのお楽しみに…。

 かようなライバル駅だが、実は似たもの同士でもある。この区間は昭和初年に高架化されたのだが、同時にできた両駅舎の基本構造はそっくり。上り下りの2面4線で(神戸駅は上り外側にもう1面1線がある)、南北通り抜けの1階コンコースには白い円柱が整然と並ぶ。

 当時はモダンな建築だっただろうが、今はそれがレトロな雰囲気になって魅力を生んでいる。どちらの駅も、港町KOBEの玄関にふさわしい。

 ☆八代 到(やしろ・いたる)1964年東京都生まれ。共同通信社勤務。父が神戸の出身で、ゆかりの地もあって僕は「三ノ宮派」です。


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