汐留鉄道倶楽部

「築地市場」駅名の行方

2018年5月25日

 (上)生き残る築地市場駅の名、(下)引き込み線跡にはレールをフェンス代わりに再利用

 地下鉄で日本最長距離の大江戸線

 80年の歴史を持つ東京都中央区の築地市場が10月に江東区豊洲に移転する。深い絆で結ばれた隅田川を離れ、運河を2つ越えた2キロ先の新天地は、外観しか知らないけど見た目は清潔そうで巨大な近未来的建造物だ。全体を取り囲む遊歩道もきれいに整備された。

 そこで気になったのは築地市場の最寄り、都営大江戸線「築地市場」駅の名がどうなるかだ。市場機能がなくなっても駅名は残るのか。いろんな新駅名を妄想してみたが、都交通局に聞くと「現段階では変更予定はない」。矢田美英中央区長も議会答弁で「名称の変更予定はない」と明言しているのだから、このまま残るのは確実だろう。

 大学がなくても大学名を冠したり遊園地がないのに遊園を名乗ったり、駅名は「ブランド」にもなる。「築地市場」駅がそのままで良かったな、と思う。長い歴史がずっと駅名に刻まれる。

 となると豊洲市場最寄りとなる新交通システム「ゆりかもめ」の「市場前」駅の行方も気になるところ。開業後、苦節12年。本当によく待ったね。やっと名は体を表すことになるわけだ。しかし、「都会の秘境駅」なんてやゆされるように、今も乗降客は極少。駅前は閑散とし、コンビニさえなく殺風景で乾いた風が吹き抜ける。

 駅名についてゆりかもめ側に聞くと「変更の予定はありません」とのことだった。ということはどちらも変化なし、疑問はあっという間に落着。でも、何かシンプルだなあ。どうせなら「豊洲市場」駅に変えて2つの市場駅が存在した方が落ち着くような気もするけど。この駅前は開場したら賑わうだろうから、“秘境気分”を味わうなら今のうちかも。

 さて、先日築地市場内の講堂で「築地魚市場銀鱗会」主催のイベントがあり、1960年代の市場の様子を撮影した映画を見た。場内は人と魚であふれ、当時の活気が手に取るように分かる映像だった。線路が張り巡らされ、冷蔵車が滑る。市場が舞台の坂本九さん主演の「上を向いて歩こう」も上映され、ラストシーンで歌を口ずさむ人もいた。皆がどっぷり60年代に漬かった。

 帰り際市場をぐるりと回った。当たり前だが、魚のにおいがずっとついて回った。いいにおい。だが、建物は確かに古い。講堂正面はいまだに昔の都のロゴマークのままだった。「衛生面でどうしても問題あるからね。でも築地の魚で中毒事故を起こしたことは一度もないよ」と市場の人は胸を張っていた。豊洲市場も事故なく活気ある市場になるといい。

 広大な敷地内には至る所にひびが入り、端が欠けたプラットホームが残っていた。線路は埋められて見えなかったが、汐留からの引き込み線跡にはフェンスに使われていた。ここに汐留から貨物引き込み線が確かにあった。やがて市場内のものは何もかもが消え、“遺構”の一つも残らないのだろうか。

 ☆共同通信・植村昌則


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