汐留鉄道倶楽部

はやぶさは星のごとく

2017年12月08日

 栄光の歴史を表す18枚のヘッドマーク=京都鉄道博物館

 廃止前の「はやぶさ/富士」=2008年12月、東京駅

 昨年春にオープンした京都鉄道博物館には、日本の鉄路を駆け抜けた名だたる車両がそろっていて、その一つ一つに圧倒されるのだが、感動するのは車両だけではない。壁一面に張られた列車のヘッドマーク18枚を見て、懐かしさのあまり「おおっ!」と声を上げてしまった。

 ヘッドマークとは列車の先頭の表示のこと。今も電車特急の先頭で「方向幕」やLEDの表示で列車の名前や名にちなんだイラストは目にするが、ここでいうヘッドマークとは、かつて客車列車を引っ張った機関車の先頭に堂々と掲げられた円板のことだ。

 ブルートレインとして名をはせた寝台特急の名前がずらりと並ぶ。東京と九州を結んだ「さくら」「はやぶさ」、関西と九州を結んだ「彗星」「なは」、関西から東北に向かった「日本海」、山陰路を走った「出雲」…。スキー客用の臨時急行列車「シュプール」という変わり種もある。

 寝台特急なのに「北斗星」や「はくつる」はないの? そう思われた方は、なかなか目の付け所が良い。京都鉄道博物館はJR西日本とその外郭団体が運営しているので、東日本の列車にはご縁がないのだ。

 だが九州特急だけでも本当に「きら星のごとし」だ。ブルートレイン人気が高まった1970年代、小学生から中学生という時期だった僕にとって、これらはあこがれの列車だった。九州に親戚がいたらいいのにと何度も思ったことは、以前このコラムでも書いたことがある。

 乗ったことがなくてもお気に入りの列車というのはできるもので、僕は「はやぶさ」だった。縦書きの名前の後ろに鋭い描線で縁取られた猛鳥のヘッドマークは何ともまぶしかった。

 だが観光客やビジネスマン、ふるさとに帰省する人たちであふれ返った寝台特急は、いつの間にか客離れが進み、一つずつ姿を消していった。この展示でも、そんな悲しい歴史をたどることができる。

 1999年、鹿児島線を走っていた「はやぶさ」と長崎線の「さくら」が併結、ヘッドマークは桜とハヤブサが同居する、ちょっと落ち着かない絵になった。2005年には「さくら」が廃止され「はやぶさ」は「富士」と組むことになって、今度は富士山の下にハヤブサが飛ぶ絵に交代、両列車が廃止される09年までこれが掲げられた。

 栄光ある長い歴史の中で短命だった併結ヘッドマークも合わせ、合計3種類の「はやぶさ」が一緒に展示されているというわけだ。

 人に歴史あり、列車にも歴史あり。今、東北新幹線を疾走する「はやぶさ」とは違う、もう一つの「はやぶさ」も忘れないでほしい。

 ☆八代 到(やしろ・いたる)1964年東京都生まれ。共同通信社勤務。大人になっても結局「はやぶさ」には縁がなかった。後悔先に立たず…。


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