汐留鉄道倶楽部

宝を生かしたい城北線

2017年11月10日

 (上)勝川駅を出発した1両編成の気動車、(下)非電化で架線柱がないので先頭窓からの見通しは抜群だ

 (上)車内はきれいで快適、(下)中央本線に接続できず仮駅のままの勝川駅入口。ホームはさらに先にある

 「城北線」と聞いてピンとくる人はかなりの鉄道通だ。地下鉄にありそうな名称だが、さにあらず。名古屋市街地の北辺を東西に走り、東海道線枇杷島駅(愛知県清須市)―中央本線勝川駅(同県春日井市)間11・2キロを17分で結ぶ鉄道である。施設はJR東海の持ち物だが営業は子会社の東海交通事業が行っている。

 特徴はずばり、立派な構造物と貧弱な運行サービスとのアンバランスだ。開業は1991年(全線開業は93年)と比較的新しく、全線高架複線で踏切がなく、コンクリート枕木にロングレールという造作はまさに新幹線並みだ。

 ところが電化されていないため、走るのは全長18メートル(一般的なJR車両は20メートル)のディーゼル気動車「キハ11」。しかも1両編成だ。平日の朝夕は1時間に3本という時間帯もあるが、日中はわずか1本。せっかくの複線なのに車両同士がすれ違うことがめったにないという“ぜいたく”な運用だ。

 大都市名古屋の一角で、どうしてこういうことになるのか。これには複雑な歴史的事情がある。

 城北線は、もともと旧国鉄時代の壮大な貨物輸送増強計画に盛り込まれた瀬戸線計画の一部だった。混雑する名古屋駅を迂回して中央本線と東海道線を短絡し、愛知県岡崎市から豊田市を経由して瀬戸市へ伸びる別の計画線(現愛知環状鉄道)ともつなぐことで名古屋圏の外環状を成すとともに、大動脈・東海道のバイパス線としての役割も期待された。

 ところが工事が始まった1970年代はすでに鉄道貨物の需要は落ち込み始めており、計画は中断。結局、鉄道建設公団(現鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が立派な軌道だけは完成させ、枇杷島駅では東海道線ホームまで乗り入れたものの、勝川駅は中央本線のJR駅から500メートル離れた仮駅を終着点とする中途半端な路線となってしまった。

 途中に4つの駅があり名鉄線や市営地下鉄とも交差するが、いずれも乗り換えは不便である。全線乗って運賃440円は、JR線より割高でこれも評判悪い。

 JRではなく子会社の別経営になっていることも含め、いろいろ大人の事情があるのは理解できるが、せっかくの高規格な施設が生かされていないという宝の持ち腐れ状態であることは開業から四半世紀立っても変わっていない。

 実際乗ってみると、日中だったせいか1両でもがらがら。北側を並走する名古屋第2環状自動車道には車がいっぱい走っているので、ここでもアンバランスさが際立つ。城北線が唯一誇れるのは、南側の眺めだ。架線柱がないのでなおさら気持ちがいい。うまいぐあいに日の出の時間帯に乗れれば、とてもきれいな朝日を楽しめるという。

 でも住宅地の眺めだけでは観光客は呼び込めない。人けのないホームに降り立って、ついつい「なんとかしようよ、城北線!」と叫びたくなってしまった。

 ☆共同通信・篠原啓一


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