汐留鉄道倶楽部

地下鉄に路面電車の車両!?

2017年10月13日

 (上)オタワを走るLRTトリリウム線。奥に見えるのが建設中のコンフェデレーション線のベイビュー停留所のプラットホーム=2017年8月26日、(下)米国西部ロサンゼルスの地下にある7番街・メトロセンター停留所に停車中の近畿車両製のLRT車両=2016年10月24日

 (上)オタワ中心部の地下で建設が進むコンフェデレーション線リヨン駅停留所のプラットホームには、イベントで多くの市民らが訪れた=2017年8月27日、(下)コンフェデレーション線の工事現場の囲いには、LRT車両のイラストが描かれている=2017年8月26日

 地上から階段を下りてたどり着いたプラットホームで地下鉄の到着を待っていると、現れたのは路面電車の車両だった―。

 そんな日本では見られない光景が米国東部のボストン、西部ロサンゼルスなどの欧米都市で繰り広げられており、来年仲間入りするのがカナダの首都オタワで建設中の次世代型路面電車(LRT)だ。今年の建国150周年で盛り上がるカナダを8月に訪れ、オタワ中心部の地下で工事中の新駅に“潜入”してきた。

 オタワ市交通局「OCトランスポ」の新路線「コンフェデレーション線」は、ブレアとタニーズ・パスチュールを東西に12・5キロ結ぶ先行区間が来年開業し、計13停留所が設けられる。そんなLRTの登場は、近郊の住宅街などと結ぶ路線バスが多く乗り入れる中心部での道路渋滞緩和と、専用軌道を走るためダイヤ通りの運行、環境対策の“一石三鳥”となる。

 というのも、専用車線を高速で走るバス高速輸送システム(BRT)や、路線バスでオタワ中心部へ向かっている利用客はLRT開業後、ブレアやタニーズ・パスチュール、途中のハードマンのいずれかの停留所でバスからLRTに乗り継ぐ方法に変わるからだ。

 コンフェデレーション線の目玉、LRT車両が日中でも暗闇を駆け抜ける地下区間(2・5キロ)には、オフィス街にあるリヨン、カナダ連邦議会議事堂や政府機関が集まるパーラメント、観光名所のリドー運河に近いリドーの3停留所が設置される。

 観光名所の近くを網羅するだけに、現地でお話をうかがったオタワ観光局のマイケル・クロカット最高経営責任者(CEO)は「LRTの中心部開業はオタワに変革をもたらし、旅行需要を大きく押し上げる。オタワ観光に大いに役立つので、とても楽しみだよ」と期待に胸を膨らませていた。

 訪問時に地下停留所の一つであるリヨンでは、構内を光と映像で彩って幻想的な雰囲気を楽しめる建国150周年行事が開かれていた。まだほとんど汚れていない灰色のセメントで固められたのは階段を下り、地下17・5メートルに出現したのが完成まで道半ばのプラットホームだった。

 線路越しに設置されたスクリーンに流される列車をイメージした映像や、カナダの大自然風の動画などは、首を長くして開業を待ち受ける市民に「電車の到着まで、もう少しお待ちください!」と訴えかけるメッセージのように映った。

 このプラットホームに来年乗り入れるのは、車いすの利用者やお年寄りも乗り降りしやすい完全低床式の車両だ。大きな窓を設けた流麗な外観が特色で、四つの車両で構成する長さ48・5メートルの1編成、または2編成を連結して走らせる。OCトランスポは「営業運転の平均時速は35キロだが、最高時速は100キロに達する」と説明する。

 カナダといえば、シーメンス(ドイツ)、アルストム(フランス)とともに鉄道車両世界3強「ビッグスリー」の一角であるボンバルディアの“牙城”だ。ところが、OCトランスポが既に運行しているLRT「トリリウム線」に続き、車両製造で白羽の矢を立てたのはアルストムだった。

 しかもアルストムは、ボンバルディアが鉄道事業の統合交渉を進めていたシーメンスを“略奪”し、9月26日に基本合意した因縁の相手だ。鉄道車両世界最大手の中国中車と、事業統合で追い上げるアルストムとシーメンス連合に規模で大差を付けられ、地盤のカナダでも受注を奪われているボンバルディアの劣勢ぶりが目立つ。

 コンフェデレーション線が近郊のベイビュー駅で接続するのが、今のところオタワ唯一の通勤列車であるトリリウム線だ。南北8キロが先行開業しており、21年に“空の玄関口”であるオタワ国際空港などへ延伸する計画。さらにコンフェデレーション線も23年にかけて東西に延伸される予定で、LRTの全長は40キロを超える見通しだ。

 現地でお目にかかったオタワ市のジム・ワトソン市長が、路線バスを中心とする現在の市内公共交通機関に比べて「より迅速に、より簡単に、そしてより環境持続性のある方法でオタワ市内を移動できるようになる」と効果を訴えるLRTの延伸計画。

 地下鉄に路面電車の車両が乗り入れる都市に加わるのにとどまらず、市内一円に広く路線網が形成されれば、日本人旅行者もこう感謝するに違いない。「ここにもLRTがおったわ!」

 ☆大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)共同通信経済部次長、前ニューヨーク特派員。オタワのトリリウム線は日本にはないディーゼルエンジンのLRTで、日本では松山市にしかない軌道と鉄道の平面交差(ダイヤモンドクロス)もある“隠れた名所”です!


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