香山リカ てのひら診察室

注目されたローラさんの行動

2018年12月21日

 

 沖縄・辺野古の新基地建設予定地で、日本政府は14日より埋め立てのために海に土砂を投入する作業を始めた。沖縄県は県知事選で新基地建設反対を掲げる玉城デニー氏を大差で当選させ、はっきりと県民の意思として「新基地ノー」を表明した。それにもかかわらず作業を強行させた政府に対し、県民、国民ができることは何なのか。

 無力感も広がりそうになる中、ハワイ在住で沖縄にもルーツのある30代の青年が、アメリカ政府に「県民投票が行われる来年2月24日まで作業を停止してほしい」と直接、請願を行う署名運動を立ち上げた。これはホワイトハウスが設けているもので、署名が10万を超えると何らかのレスポンスがあることになっている。

 さまざまな著名人、文化人が参加する中、とくに注目されたのはタレントのローラさんが、自身のインスタグラムのストーリーズ機能を使い、「美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかも」などとして署名を呼びかけたことだ。署名じたいはあっという間に10万を突破し、いまも増え続けているが、ローラさんのこの行動に対して、「仕事に影響はないのか」などと懐疑的な視点から取り上げるワイドショーもある。

 この「タレントや俳優が少しでも政治的な発言をするのは好ましくない」という風潮は、いつの頃からか日本の社会に深く根づいている。しかも矛盾しているのは、「総理と食事をした。いい人だった」など政権との近さをアピールする分には問題がないのに、少しでも政権の行うことに批判的な観点でものを言うときだけ、「政治的すぎる」「仕事の領分を超えている」などと眉をひそめられるということだ。

 欧米、いや韓国などアジアでも最近は、しっかりと自分の意見を持ったアーティストのほうが支持される傾向がある。先のアメリカ中間選挙でも歌手のテイラー・スウィフトさんが民主党支持を明かして民主党への投票を呼びかけた。

 「政治のことなんてむずかしくてわからないんです」と無垢というより無知なほうが、大衆の人気を広く集められる。こんなおかしな風潮はもう終わりにしたい。本当に成熟し、自立して自分の意見を言えるタレントが人気者になる。日本も早くそうなってほしいと願うばかりだ。(香山リカ、428回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


バックナンバー

楽しむ

エンタメコラム
特選お役立ちコラム
中島麻希 信州FOOD記
成沢篤人 それはさておき、ひとまずワイン
横山タカ子 暮らしの調味料
東京アート日和
信州スポーツ
信州お天気手帖
イベント情報
イベント情報投稿
書籍・CDランキング
グローバルメニュー
  • 信毎デジタルパスポート
  • 信毎の本オンラインショップ
  • 信毎イベント&チケット
  • 信毎オリジナルグッズ