香山リカ てのひら診察室

覚せい剤依存は明らかな疾患だ

2018年12月14日

 

 覚せい剤の前科2犯を有し、さらに自宅で覚せい剤を使用としていたとされる30代の男性に、東京地裁が13日、「懲役2年6月、執行猶予5年」の判決を言いわたした。男性の母親は誰もが知る有名女優で、息子が覚せい剤で逮捕されるたびに、テレビの情報番組などでは「母親の責任」もあわせて問われてきた。

 裁判官は、男性が「更生の意欲も示している」ことを認め、「社会内で更生する機会を与える」として、実刑ではなく執行猶予つきの判決としたと述べた。

 覚せい剤の所持や使用は日本の場合、法律違反なので、それを犯した人は逮捕され、裁判で裁かれる。覚せい剤は反社会的組織の資金源にもなっているから、それは致し方ない面もある。しかし、覚せい剤依存は明らかな疾患だ。脳の構造が覚せい剤を受け入れるように変質してしまうので、ちょっとした心がけではとても断ち切ることができなくなる。私の患者さんの中には、「いちにちいちにちが“覚せい剤を使いたい”という抑えられない欲求との闘い。ちょっとでも気を抜くとすぐに使用に走ってしまいそう」と語ってくれた人もいた。その人は決していいかげんな性格などではなく、「更生の意欲」も十分に持っている人だった。

 この凄まじい病である覚せい剤依存を克服するには、薬物療法に加えて毎日、自助グループのミーティングに参加したり、“気持ちと時間のすきま”ができないようにひととすごす予定を作ったり、と長期間にわたって相当な努力と工夫を続けなければならない。

 今回、執行猶予判決を受けた男性も、すぐに「社会復帰を目指す」などと言わずに、まずは「覚せい剤を使用しないこと」を人生の目標として日々を送ってほしい。また「覚せい剤依存はただの罪ではない。親の責任でもない。深刻で長期間、続く病なのだ」という認識が、社会に広がることを望みたい。(香山リカ、427回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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