香山リカ てのひら診察室

「皇族を巻き込んだ議論」の可能性に投じた一石

2018年11月30日

 

 誕生日の記者会見で秋篠宮さまが、新たに即位した天皇が一度に限って行うことになっている「大嘗祭」について、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当か」と述べ、さらに天皇家の私費にあたる「内廷会計」を充てるべきだという考えを語った。

 新天皇の即位に伴う来年11月の大嘗祭については、すでに政府が公費を支出することが決定している。前回の大嘗祭には約22億5千万円が使われ、今回もすでにこの祭祀のために14億円をかけて宮殿が新設されることになっているというから、おそらく支出は前回を下回ることはないだろう。

 一方、内廷会計は国費と天皇家の積み立てなどの資産で成り立つものだが、そのうちの国費の部分は約3億円。それを考えると、万が一、内廷会計でこの行事を賄うことになれば、その規模はかなり縮小されることになる。そのことに関しても秋篠宮さまは「身の丈にあった儀式で」と述べている。

 その発言をストレートに受け取れば、そこには「国民に大きな負担をかけたくない」「宗教色の強い儀式は政府の決定などとは分けるべき」という秋篠宮さまの考えが反映されおり、多くの国民が納得するものなのではないか。

 一方で憲法には「天皇は国政に関する機能を有しない」とあり、新天皇のもと皇位継承権2位となる秋篠宮さまがこういった踏み込んだ発言をすることに眉をひそめる人もいる。しかし、誰もがSNSで自分の考えを述べることができる反面、公の場では「言論の委縮」も進むなど、「表現の自由」のあり方やの意味が問われているいま、改めて「皇族が自分の口で考えを述べること」についてタブー視せずに考えてみてもよいのではないか。私は個人的にはもっと自由闊達に皇族が意見を述べ、それが憲法に抵触しているならばそのつど誰かが指摘する、という試行錯誤があってもよいと考えている。秋篠宮さまが「皇族を巻き込んだ議論」の可能性に投じた一石から、何が始まるか。注意深く見守りたい。(香山リカ、425回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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