香山リカ てのひら診察室

会社とはどうあるべきか、従業員も幸せになる働き方とは何か

2018年11月23日

 

 日産のカルロス・ゴーン元会長の逮捕のニュースが、日本社会に大きな衝撃を与えた。直接、自動車業界にかかわりない人にも、ゴーン元会長の名前や業績はよく知られている。

 私は、ゴーン元会長が1999年に来日し、他の外国出身の経済人らのように日本への“お世辞”もまったく口にせず、経営合理化のために工場の閉鎖や派遣社員の解雇を発表した様子が忘れられない。それまでの日本の会社社会では長らく「終身雇用」「年功序列」が柱であったが、ゴーン元会長はそれらを全否定し、厳しい成果主義を取り入れたのだ。

 この姿勢は、日産だけではなく広く日本の経済界に大きな影響を与えた。私が産業医としてかかわった事業所の中にも、「あの日産改革以来、わが社も遅れてはならない、と急ぎで成果主義を導入した」と語っていたところがあった。ただ、その会社ではあまりに変化が急激だったために、それについて行けずうつ病などを発症して長期休職する社員が激増したのだそうだ。

 もちろん、すべての会社や従業員にとって成果主義がマイナスに働いたとはいえない。とくに若い社員たちの中には実力を発揮し、年齢にとらわれずに高い地位について活躍した人もいるだろう。とはいえ、今回の逮捕劇は改めて、徹底した経営合理化や成果主義が必ずしも唯一の選択肢とはいえないのでは、ということを私たちに考えさせる。

 ゴーン元会長が何をして、日産がどうかかわったのか。その全容を知るにはこれからのおそらく長期間に及ぶ捜査や裁判を待たなくてはならないが、それと同時に、もう一度、「会社とはどうあるべきか。従業員も幸せになる働き方とは何か」という問題も考えてみる機会にしてはどうだろう。(香山リカ、424回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数


バックナンバー

楽しむ

エンタメコラム
特選お役立ちコラム
中島麻希 信州FOOD記
成沢篤人 それはさておき、ひとまずワイン
横山タカ子 暮らしの調味料
東京アート日和
信州スポーツ
信州お天気手帖
イベント情報
イベント情報投稿
書籍・CDランキング
グローバルメニュー
  • 信毎デジタルパスポート
  • 信毎の本オンラインショップ
  • 信毎イベント&チケット
  • 信毎オリジナルグッズ