香山リカ てのひら診察室

デマやフェイクニュースは選挙の意味を無効化し、民主主義の根幹を破壊する

2018年9月14日

 

 沖縄で県知事選が始まった。翁長雄志前知事の死去にともない、辺野古新基地建設反対というその遺志を継ぐ玉城デニー候補と、普天間から辺野古への県内移設計画を進める現政権が推す佐喜真淳候補の事実上の一騎打ちと見られている。

 目につくのは、選挙戦が始まる前から数多くの情報、とくにデマや誹謗中傷が飛び交っていることだ。片方がもう一方をダブルスコアでリードしているとの世論調査がある、といった記事が夕刊紙やネットニュースなどに載ったが、世論調査をしたとされている新聞社はその事実を否定。ほかにも両候補の私生活に関するウワサなども大きく雑誌に取り上げられ、ネットで拡散されている。

 現代の選挙に情報戦はつきものだ。とくにネット時代、さまざまな情報が発信され、議論がわき上がるのは当然のことといえる。とはいえ、明らかなデマや真偽のはっきりしないウワサの拡散は、明らかな選挙妨害であり、有権者の判断を惑わせるものでしかない。

 アメリカでは大統領選でのロシアの介入やフェイクニュースの拡散が、選挙から2年近くがたついまだに尾を引いており、選挙じたいが無効だったとする主張もある。トランプ政権への不信の根幹にも、「正しい選挙で選ばれたとはいえないのではないか」という有権者の思いが関係していることも明らかだ。

 つまり、正当なやり方ではない手段が講じられたとえ選挙に勝ったとしても、結局は有権者からの支持を得られず、何かにつけて選挙の時点に立ち返っては不信や疑問の声を浴びることになる、ということだ。

 今回の沖縄知事選は全国が注目する大切な選挙だけに、両陣営とも必死なのだろう。とはいえ、デマやフェイクニュースは選挙の意味を無効化し、民主主義の根幹を破壊する愚行だ。正しい情報に基づきしっかりした判断で投票する、という権利を有権者から奪うことだけはやめてもらいたい。(香山リカ、414回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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