香山リカ てのひら診察室

「これから沖縄で何が起きるか」に注目を

2018年8月10日

 

 沖縄県の翁長雄志知事が、がんにより67歳という若さで亡くなった。この春に闘病を明らかにし、手術を終えて職務に戻り、このたび米軍基地辺野古移設工事の承認撤回の手続きに入ることを表明していただだけに、沖縄県内のみならず全国に衝撃が走った。

 気になるのは報道とネットの反応だ。ニュースでは米軍基地問題における翁長知事の「政府との対立姿勢」を強調するものが少なくないが、これは知事個人の意思ではない。翁長知事はそもそも基地建設反対を公約の柱として当選したのだから、それを果たすのは当然のことだ。米軍基地反対は沖縄県民の民意なのである。

 ネットでは、がんに罹患していた知事が治療に専念できなかったのは、野党が基地建設反対のシンボルとして翁長知事をかつぎ続けたから、などの声が広まっているが、それも間違いだ。周囲から伝え聴く限り、翁長知事が辞職して治療したいと漏らした、という話はまったくない。それどころか、最後の緊急入院の際も意気盛んに承認撤回の進め方について語り、指示を出していたそうだ。

 沖縄には「マブイ(魂)」を大切にし、先祖など先立った人の声を聴くという文化が根づいている。「人間は死ねばそれで終わり」という近代的な価値観とは異なる死生観を持っている人たちも多い。沖縄の自民党の要だった翁長知事は「イデオロギーよりアイデンティティー」と言って、「オール沖縄」の推薦を受けて基地反対を掲げて知事になった。沖縄人であることがアイデンティティーになっている人たちは、今こそ翁長知事の魂の声に耳を傾けようとするだろう。「これから沖縄で何が起きるか」に全国が注目すべきだと思う(香山リカ、409回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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