香山リカ てのひら診察室

こういう幕引きでよかったのか

2018年7月06日

 

 オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫ら、教団関係者7人の死刑が執行された。

 教団の代表であった松本智津夫は一審の途中から不規則的な言動を繰り返し、さらに無言状態となって意思疎通がはかれなくなり、ついに一連の事件の核心部分が語られることはないままとなった。

 多くの犠牲者を出し、日本全国を恐怖に陥れたこの事件や加害者たちに対し、擁護の余地はないだろう。しかし、「こういう幕引きでよかったのか」という疑問が残る。

 松本智津夫には、合計9人の精神科医が面会をした。裁判所が選任した1人、検察が委嘱した2人、あとの6人は弁護士が依頼した精神科医だ。このうち、裁判所と検察の3人は「拘禁状態にあるが訴訟能力はある」「詐病の疑いが否定できず訴訟能力はある」との見解を出している。ところが残りの6人はいずれも、「拘禁反応による昏迷状態」「拘禁精神病」などの推測とともに「訴訟能力は有していない」との判断を下しているのだ。その中には、「治療によって回復の可能性はある」としている医師もいる。

 6人の医師はしめし合わせたわけではなく、それぞれが別々に依頼され、松本に面会している。いずれも限られた時間ではあるが、裁判所、検察側からの精神科医も、通常の精神鑑定のように長い時間をかけて診察や検査をしたわけではなく、拘置所内での短い診察のみでの判断だ。他の精神科医たちは「せめて通常の鑑定のように病院に移し、時間をかけての診察を」「治療してからきちんと裁判を受けさせるべき」と主張したが、それは認められなかったのだ。

 9人の精神科医のうちの6人が、「訴訟能力はない」とした松本の精神状態。そこで何が起きていたのか。そして、オウム真理教事件とは本当は何だったのか。それが解き明かされる日はもう永遠に来ない。(香山リカ、404回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


バックナンバー

楽しむ

エンタメコラム
特選お役立ちコラム
中島麻希 信州FOOD記
成沢篤人 それはさておき、ひとまずワイン
横山タカ子 暮らしの調味料
東京アート日和
信州スポーツ
信州お天気手帖
イベント情報
イベント情報投稿
映画館情報
書籍・CDランキング
グローバルメニュー
  • 信毎デジタルパスポート
  • 信毎の本オンラインショップ
  • 信毎イベント&チケット
  • 信毎オリジナルグッズ