香山リカ てのひら診察室

大学とは何か、大学スポーツとは何かという基本

2018年5月25日

 

 日大アメフット部の“悪質タックル”の問題、波紋は広がるばかりだ。タックルを行った選手は顔を出しての会見に臨み、試合中の暴力的なプレーは監督とコーチの指示であったと語ったが、監督らはそれを否定。選手が受けたという「つぶせ」という言葉による指示は、「思いきって行け」という意味だったと釈明した。

 しかし、選手が語った一連の話を聴くと、その説明には無理がある。また、万が一にも本当にその意味であったとしても、そう取られかねない指示を出した責任は監督らの側にある。また、大学の部活動で起きたことなのに、学生が矢面に立って謝罪しなければならない状況を作った大学の姿勢にも、疑問を感じずにはいられない。

 私も大学教員なので、大学の看板を背負った花形スポーツ部のプレッシャーが半端ではないことはよくわかる。注目度も高く、選手は“スター”にはなれるが、同時に学生であることも、その競技をアマチュアとして楽しんでいることさえ忘れ、勝つために練習に打ち込まなければならなくなる選手もいる。大学によっては、重要な試合のときには“公休”として授業の欠席を認めるところもあるらしいが、それじたい学生スポーツのあり方としてはどうなのか。

 もちろん、大学生だからといって教室にばかりいるのが正しいこととは言わない。部活だけではなく、ボランティア、バイトや遊びも学生にとっては大切な経験だ。しかし、なんといっても「何のために大学に行くのか」といえば、それは「勉強するため」なのではないか。堅苦しい話をするようだが、今回の問題ではそれがまったく置き去りになっていたため、部も大学もひとりの“勉強する学生”ではなく、“選手”としてしかあの学生を見られなくなってしまっていたのではないか、と思うのだ。大学とは何か、大学スポーツとは何か、という基本をもう一度、考えなおすべきではないだろうか。(香山リカ、398回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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