香山リカ てのひら診察室

弁護士への懲戒請求の背後から響いてくる声

2018年5月18日

 

 東京の弁護士らが、あるブログの呼びかけにより所属する弁護士会に数千件の懲戒請求が寄せられて被害を受けたとして、賠償を求める訴えを起こす方針を記者会見で明らかにした。ブログの呼びかけから察するに、朝鮮学校への補助金支給の取りやめを促すような文科省の通知を批判する弁護士会の声明がきっかけのようだが、今回、会見した弁護士はこの問題に直接のかかわりは持っていなかったという。同様の大量懲戒請求は他の弁護士に対しても行われており、謝罪と賠償を求める動きは拡大しそうだ。

 今回の問題の直接の被害者は、身に覚えのない懲戒請求への対応に追われ、日常業務に支障を来たした弁護士たちだ。しかし、ここでそのきっかけが朝鮮学校の補助金問題であることも忘れてはならない。実際に文科省の通知以後、補助金を交付していた28都道府県は昨年の段階で12まで減ったとされる。この文科省の通知は、弾道ミサイル発射実験などを繰り返す北朝鮮への「圧力」のひとつと考えられる。

 東京弁護士会の会長声明は、こういった外交の問題に子どもを巻き込んではいけない、学ぶ権利を保証すべきだという、人権の立場に基づいたものだ。北朝鮮のこれまでの強硬姿勢には批判的な人がほとんどだと思うが、子どもへの教育の機会はこれまで通り守るべき、という意見にはうなずく人も多いのではないか。しかも、声明を出したのは弁護士会という人権を守るプロの職能集団だ。もしその声明に直接かかわっていたとしても、集団を煽動しての懲戒請求を受ける理由などまったくないはずだ。

 弁護士への懲戒請求の背後から響いてくる、「日本に住む朝鮮の子どもたちから教育の機会を奪え」という声。そのことも忘れてはならないだろう。(香山リカ、397回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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