香山リカ てのひら診察室

天皇陛下のあいさつにこめられた思い

2018年1月05日

 

 2018年が始まった。

 1月2日、皇居の一般参賀には12万7千人もが訪れた。平成になって最大の人出だそうだ。

 天皇陛下のあいさつは毎年ほとんど同じ内容だが、今年は微妙に違っていた。去年は「本年が人々にとり、穏やかで心豊かな年となるよう願っております」と述べられたが、「本年が少しでも多くの人にとり、穏やかで…」となっていたのだ。「人々」も「少しでも多くの人」でも同じではないか、という人もいると思うが、あえて変更を加えたところに天皇陛下の思いを読み取ることもできる気がする。

 つまり、その行間を読むと次のようになるのではないか、ということだ。「『すべての人々にとり』と言いたいところだが、厳しい世相のいま、そう言うことはむずかしい。ならば、せめてひとりでも多くの人にとって、平穏な年であってほしいと願っている。」

 もちろん、これは私の推測であり、「いまもアベノミクスなどの恩恵で多くの人が心豊かにすごしているので、さらにそれに加えてもっと多くの人が」という意味だ、という声も聞こえてきそうだ。ただ、いつも世の中の弱い立場や困難な立場にある人に寄り添う天皇陛下としては、「たいへんな中だがひとりでも多くの人が平穏に暮らせるように」という切実な思いをこの言葉に込めようとなさった、と考えるのはそれほど不自然ではないだろう。

 北朝鮮情勢は年初も相変わらず穏やかではないが、それに振り回されすぎることなく、日本の社会の中で苦しむ人、あえぐ人にも目を配りながら、穏やかな一年をともに作っていきたい。一般参賀に参加した人、テレビでこのニュースを見た人たちも、皇室の方々とともにこう誓ったと信じたい。(香山リカ、380回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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