香山リカ てのひら診察室

安くて質のよいサービスになれすぎていないか

2017年12月22日

 

 日本郵政の宅配便「ゆうパック」に最大で半日程度の遅れが出たことが明らかになった。年末は例年、荷物が増えるが、今年はいつもの年より2割ほど増加し、仕分け作業が追いつかなくなったのが原因という。

 宅配便最大手「ヤマト運輸」の値上げも影響していると見られているが、ネット通販の普及も関係しているだろう。最近はネットで日用品や食料品も注文できるようになり、利用者にとってはとても便利なのだが、注文は画面上でできてもそれを届けるために人手がいることは昔と変わらない。

 日本は全国津々浦々にまで迅速に荷物を届けることができる仕組みが普及しているが、国際比較したことはないものの、その料金はかなり安いのではないだろうか。ヤマトの値上げ前は、料金は据え置きのまま、とにかく「速く正確に」というサービスの向上ばかりが求められていた時期が続いた。そうなると当然、そのしわ寄せで人件費や人員が削減されることになる。以前、トラック輸送の組合の人たちと話をしたことがあるが、通信販売で「送料無料」とうたい、その分、運輸会社とより低い料金で契約する業者が増えているのだそうだ。「私たちとしては弱い立場ですから、取引先の求めに応じて料金を下げ、運転手には休憩時間をカットして時間を短縮するように求めます。そうなると今度は事故の危険性が増えて…。」長距離トラック輸送を手がける会社の管理職が、そう話してくれた。

 便利になったり、料金が安かったりするのはうれしいことだが、その分、多忙や低賃金にあえぐ労働者が増えることがあるのを忘れてはならない。もちろん、送った荷物は早く先方に着いてもらいたいのは当然とはいえ、だからといって「ゆうパック」の職員たちが過重労働を強いられてよいというわけはない。「急がなくてもよい荷物」というカテゴリーを求めるなどしてなんとかならないものか。私たちはあまりに安くて質のよいサービスになれすぎていないか、もう一度考えてみるべきだ。(香山リカ、379回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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