香山リカ てのひら診察室

メディアの原点に立ち返ることを望みたい

2017年12月15日

 

 今年1月に放映された東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)の情報バラエティー『ニュース女子』に対して、BPO(放送倫理・番組向上機構)は「重大な放送倫理違反があった」という重い判断を下した。

 同番組の沖縄特集では、「基地反対派は逮捕されてもかまわない高齢の“シルバー部隊”」「反対活動で地元の救急車の走行に支障」「日当をもらって参加」「韓国人、中国人が反対運動をしているので地元は怒り心頭」といった内容を映像とスタジオトークで伝えるものだった。しかも冒頭では「マスコミが伝えない隠された真実」とのテロップも出るので、視聴者は沖縄基地反対活動は日当目当てで集まった地元民以外によって暴力的に行われている、という印象を持つのではないだろうか。

 意見書によるとBPOの委員は沖縄にも赴き、「救急車」「日当」のふたつに関しては事実に反することを突き止めた。推して知るべし、でほかの部分も一部の人の思いつきやネットのウワサなどで取り上げられていたのだろう。「真実」を伝えるどころか、基地に反対して声を上げる地元の住民や全国で反対を訴える人たちを徹底的におとしめるためにあえて作られたのではないか、とさえ思えてしまう。

 BPOは民放連加盟社とNHKが作る外部組織なので、完成されたVTRで持ち込まれた今回の番組に関しては、実際に作った制作会社にではなく、放送した東京MXが考査を怠り、「放送してはならない番組を放送した」という理由で倫理違反と認定した。しかし、それ以上に深刻なのは、このような思いつきやデマに基づく番組が“ウケるはずだ”と考えて制作する会社があり、それを見て実際に喜ぶ視聴者がいるということだ。

 権力に逆らうものは笑いものにし、デマやウワサをいくらでも流してよい。こんな風潮が広まるのはなんとしても止めるべきだし、それこそが本来のメディアの使命のはずだ。東京MXや制作会社には反省の上、メディアの原点に立ち返ることを望みたい。(香山リカ、378回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数。


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