香山リカ てのひら診察室

トランプ氏支持者に見る自己肯定の欲求

2017年5月19日

 

 当然といえば当然かもしれないが、いま日本のテレビの報道番組と国際ニュースチャンネルとを見ると、「これが本当に同じ世界か」とめまいがする。日本は共謀罪の採決、加計学園問題とともに、なんといっても「眞子さまご婚約へ」のニュースが多くを占めているが、国際ニュースはトランプ大統領陣営のロシア疑惑捜査の話題一色だ。

 後者に関して、米司法省は17日、ロシアによる選挙介入疑惑の捜査を指揮する特別検察官に元FBI長官のロバート・モラー氏を任命した。それに対してトランプ氏は、自身のツイッターで「これは米国史上、最大の魔女狩りだ!」などと怒りをあらわにしている。

 BBCを見ていたら、トランプ支持の市民たちがインタビューに答えていた。興味深かったのは、その中で「メディアは左翼だからトランプ政権を倒し、国を滅ぼそうとしている」「事実もまだ明らかではないのに、毎日報道が続いてうんざりだ」などと語り、これがメディアや反トランプ派の“陰謀”だと考える人たちが出てきたことだ。トランプ大統領はこれまで自分に都合の悪い事実が報じられるたびに「フェイクニュースだ」などと言って激しく批判してきたが、それを信じている人が少なからずいるということだ。

 これはなぜなのか。ひとことで言えば、「自分が支持した大統領は正しいに決まっている」と信じ続けることは、自分への肯定感につながるからだと思う。もし、その人が不正を働いていると認めることになれば、「私の支持は間違っていた」と自分の信念の誤りをも受け入れなければならない。それは回避したい、という支持者の無意識の欲求が、「トランプ氏を叩くのは何らかの思惑があるから」といった陰謀論を強化し、拡散して行く。しかし、これはことアメリカに限った事態なのであろうか。すべてを「閣議決定」して一方的にことを進める日本の政権の高い支持率の背景にこの心理はないか、と考えてしまう。(香山リカ、349回)

☆かやま・りか 1960年札幌市生まれ。立教大現代心理学部教授。現代人の心の問題を中心に、社会批評など多彩な分野で活躍。「しがみつかない生き方」「『看取り』の作法」など著作多数


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