エンタメ記者コラム

働く女性

2018年12月06日

 左から望月衿子さん、小手鞠るいさん、大塚万紀子さん

「働く女性に贈る27通の手紙」(産業編集センター)というタイトルの本を手に取った当時、洗濯機を使うにはご近所が気になる時間に帰宅する日々が続いていた。服やタオルがぱんぱんに詰まってあふれた洗濯機を見ては思わず「はあー」とため息がこぼれるばかり。癒やしを求めるかのように、やわらかいタイトルに引かれて読み始めた。



 米国在住の作家、小手鞠るいさんと、出版社を経て独立し、別名での執筆活動もしている望月衿子さんの共著で、四季折々の描写を盛り込みながら、「女性が働くこと」について往復書簡のスタイルでつづる。「働く女性の先輩」としての2人の意見が、すっと心に浸透していくかのような読み心地で、性別を問わず、きっと多くの働く人にも共感してもらえるのではないかと思い、書評でご紹介した。



 年代の違う著者2人が、それぞれに経験してきたことや疑問を素直に伝え合う。出産や、昇進、友情といった多岐にわたるトピックを交え、重ねられるやりとりは、気取ったところや強がったところがない。小手鞠さんが作家として低空飛行を続けた時期のこと、会社を辞め、独立した望月さんが感じる自由と葛藤―。包み隠さず吐露される感情に触れると、いつの間にか「働き続けること」に対して無意識に身構えていた自分に気付く。そして、投げ出せないものだからこそ、良い意味でも悪い意味でも、時には仕事が逃げ場になってくれることにも。



11月、帰国中の小手鞠さん、望月さんと、書評を執筆してくださった、ワーク・ライフバランスコンサルタントの大塚万紀子さんの3人に会った。知り合って10年ほどという小手鞠さんと望月さん。会話の端々からも仲の良さが伝わってくる。当初は望月さんが筆者として登場する本ではなく、内容も違うテーマだったという。だが、「私が何を語っても、従来の私の本になる。彼女という存在が入ることによって、何か新しいものができるんじゃないかと思って」と小手鞠さん。模索する中で、架空の手紙ではなく、等身大の望月さんとの往復書簡というやりとりにたどり着いたそうだ。本でフォーカスした「働く」ということについて、望月さんは、仕事は人生の一部を費やしてするものだから「費やすに値するものを得ないとやる価値はない」と穏やかに、力強く語る。だから「自分の心がよろこぶ仕事」をすることをこころがけていると明かす。



 普段、米国で働く女性を目の当たりにする小手鞠さんは、ある会議中に、子どもを迎えに行く時間になったと申し出た女性弁護士について教えてくれた。「(周囲の)男性も『それはそっちが大事だから行きなさい』って言い、彼女は去って行く」。許可を得るわけでもなく、ごく当たり前のこととして、当事者も周囲も受け止めている空気だったと振り返る。あくまで小手鞠さんが感じるものだと前置きしつつ、育児に「協力」ではなく「自分のもの」として関わる男性も多く、ライフスタイルが変わっても女性は仕事を続けやすいのではないかと言う。「今の日本も、私が知っている昔に比べると画期的に良くなっている。変わりつつあるときではないか」



 育児で仕事を離れた際に、どれほど仕事が好きだったのかを再認識したという大塚さんは「本の中で『あなたを救ってくれるのは仕事よ』ってところがすごく響いた」と言う。同感だった。もちろん苦しいことは山ほどあるけれど、長時間携わっている仕事が、単に収入を得る手段以上のものであってほしいし、そうしたい。ぽわんと体温が上がるのを感じた。環境は違っても、好きな仕事に楽しく取り組んでいることがにじみ出ているパワフルな3人が、目の前でこんなすてきな笑顔なんだから、そんな風に働こうって意欲的になるのは当たり前でしょう。ふふ。(萩原里香・共同通信文化部記者)


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