エンタメ記者コラム

コンセプトに「宮崎あおい」? 波音が心地いいKisssh-Kissssssh映画祭(9/16~17開催)

2017年9月14日

 Kisssh-Kissssssh映画祭の野外上映(小川貴央さん提供)

▼「波の音がする所で映画見たいな。絶対気持ちええやん」。と言うだけなら誰でもできるけれど、映画会社に上映の権利許諾をもらい、上映場所の所有者に許可をもらい、近隣住民の理解も得て、設営して、と手間は多いし、もちろんお金も必要になる。

▼和歌山市の会社経営、小川貴央(おがわ・よしてる)さんは、30代後半だった5年前、友人の学生らと3人で言ってみたことを、実行に移してみた。当初は仲間内でやるつもりが、準備を進めるうちに規模は大きくなり、1回目で千人近くも集まってしまった。映画祭の名「Kisssh-Kissssssh」は、波音と「紀州」をかけてある。

▼会場に選んだのは、同市の小さな漁師町、加太(かだ)。時間がゆったりと流れていて、家々の間を縫う細い路地は、猫がひょっこり顔を出す姿が似合って風情がある。

上映の権利許諾などは知人に一から教わり、海辺のグラウンドに大スクリーンを設営。地区内の空き家や空き店舗を掃除して、小さな上映会場に変身させ、地区内を回遊してもらうようにした。「漁師町で映画っていうギャップが何ともいいんですよ。来た人はたいていみんな気に入ってくれます。県外客の方が多いんですよ」と小川さん。

▼運営は学生らがボランティアで手伝ってくれる。住民は海産物の出店で盛り上げる。授賞作への賞品もおいしい海産物だ。参加した映画監督らは東京などに戻ると、映画祭のことを広めてくれる。「運営で失敗があってもいいと思ってます。それも手作りの、ライブ感だと思うから」。当初は開催に反対する地元の人も多かったそうだ。小川さんたちも1回開催できれば十分だったが、「終わった後の打ち上げで、町の人たちから言われたのが、『来年もやってくれるんやろな』だったんですよ」。泣かせる。

▼「意図してなかったけど、結果として町づくりに役立ちました。映画祭って、やれば必ず地域に役立っちゃうと言っても過言じゃないですよ」。漁協や自治会、観光協会が一体になったし、小川さんたちの取り組みに触発されて、空き家でパン店を開いてみた人もいれば、名古屋から引っ越してきた人までいたという。

▼「映画だけで人を集めるのは大変です。便利過ぎるインターネット(での映画視聴など)には、そうそう勝てない。でもリアルな環境を生かせば勝てる。雨が降ったら降ったでええやん、野外音楽フェスって、雨が降ってもみんな楽しんでますもんね。それが伝説の年になったりもする。最近はあまりないドライブインシアターとか、お寺でホラー映画上映とかもしてみたい」。やりたいことがいろいろと湧いてくる。

▼「作品選びは大事です。まずは自分たちが上映したい作品っていうのが基本。それとやっぱり、『そこきたか』って思ってもらえるように選ぶっていうのはありますね」。5回目の今年は9月16日、17日に開催。夜の部の野外上映作品は『はらはらなのか。』(酒井麻衣監督)、『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス監督)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(三浦大輔監督)、『ムーンライズ・キングダム』(ウェス・アンダーソン監督)。ゲストも酒井監督ら多数予定されている。

▼2時間近く話を聞かせてもらい、取材を終えようかという段になって小川さんが言った。「実はというか、映画祭のコンセプトは僕らの中で最初からずっとあって、変わってないんですよ。文化系ふんわり女子がカメラ片手に来てくれるような…、つまりは、宮崎あおいさんが来てくれる映画祭!(照れ笑い)。そこはずっとブレてません」。それが隠れた軸だったのかKisssh-Kissssssh。「あおいちゃん、来てくれたことはないけど(笑)」と小川さん。いやいや、来てくれる日が到来しても全然不思議じゃないです。心地よさと、手作りのゆるさを気に入って、愛を示すファンが着々と増えている映画祭です。

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第102回=共同通信記者)


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