新刊レビュー

『国体論』白井聡著 天皇制に代わる対米従属

2018年6月01日

 

 賛否相半ばすること必至だが、近年の批評史に刻まれる論考となるだろう。

 戦後日本を規定する対米従属の構造を論じた著書『永続敗戦論』で注目を集めた著者が「国体」をキーワードに考察を進展させ、日本が直面する危機の核心を提起した。

 国体は通常、天皇を頂点とした戦前の体制を意味する。敗戦で表面上は廃絶されたが、実は天皇の代わりに米国を頂く形で戦後も存続している、というのが立論の骨子である。

 死語同然の「国体」という概念を使う理由は、日本の対米従属のあり方が極めて特異だからだ。突出して米国優位の日米地位協定や日本市場への米国の度重なる参入。問題は隷属の事実を直視せず、「相思相愛の日米関係」という幻想を日本国民に植え付けた点にある。それは「天皇陛下とその赤子たる臣民」という戦前の幻想と相似形をなすという。

 明治維新から現代に至る日本を「形成・発展・崩壊する国体の反復」として描くことで、沖縄の犠牲や「マネー敗戦」など日本が経験した数々の不条理が明確に意味付けられる。その構図を支えた冷戦体制が崩れ、経済の主軸がアジアにシフトした今、戦後の国体は崩壊しつつある。それは戦後民主主義の危機をも意味する。

 対米従属レジームを固守しようとする現政権と親米保守支配層に対し、日本が岐路に立つことを身を挺して告げたのが今上天皇のビデオメッセージだったと著者は見る。国民に理解と熟慮を促した異例の呼びかけに著者は本書で応答した。

(集英社新書 940円+税)=片岡義博


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