花まるシネマ

『テルマ』 不可解な発作をきっかけに恐ろしい“力”が覚醒する

2018年10月16日

(C)PaalAudestad/Motlys

 「北欧ホラー」をうたっているが、果たしてこれはホラー映画なのだろうか? 確かに一見『キャリー』を思わせるが、純粋に怖い映画が観たい人には勧めない。北欧には幻想映画の伝統があり、キリスト教と密接に結び付いてきた。代表例がイングマール・ベルイマン。本作は、このスウェーデンの巨匠を継承する作品と言っていい。

 ノルウェーの田舎町で敬虔なキリスト教徒の両親に育てられたテルマは、オスロの大学に通うため一人暮らしを始める。彼女は不可解な発作を契機に、奔放な同性の同級生と知り合い恋に落ちるが、その初恋が封印されていた恐ろしい“力”を覚醒させることに。ホラーやファンタジーというジャンルには、『ゾンビ』の例を挙げるまでもなく、作り手が社会的なメッセージや思想を娯楽性に仮託して描いたものが多い。本作の場合も、恐らく超能力は何らかのメタファーのはず。

 ここで描かれるのは、少女が大人になるための通過儀礼と成長のプロセスだ。欲望を汚れたものとして刷り込まれた少女が、社会の多様性に接して自らを解放していく物語は、風刺精神に満ち、見る者に解釈を委ねる示唆に富んだディテールは芸術性を併せ持つ。ホラー要素があるとはいえ、キリスト教的な清濁を盛り込んで少女の成長を寓意的に描いた本作は、真にベルイマン的な映画と言えるだろう。★★★★☆(外山真也)

監督:ヨアキム・トリアー

出演:エイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンス、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン

10月20日(土)から全国順次公開


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