花まるシネマ

『母という名の女』 母親が見せる恐ろしい本性と、そのリアリティー

2018年6月12日

(C)Lucia Films S. de R.L de C.V. 2017

 『父の秘密』『或る終焉』のメキシコの鬼才ミシェル・フランコの新作だ。前2作に続き、今回もカンヌ映画祭で受賞している(「ある視点」部門審査員賞)。海辺の別荘に2人で住む姉妹の元に、疎遠だった母親が戻ってくる。妹が17歳で妊娠したためで、最初は優しく献身的だったが、やがて恐ろしい本性を現し…。

 メキシコといっても、ラテン的なノリや雰囲気は微塵もないのだが、その作家性は強烈で、“家族(親子)”なるものへのゆがんだアプローチ、人間を見つめる冷徹なまなざし、モラルを逸脱する登場人物、衝撃のラスト、さらには自動車や海といったアイテムの多用、BGMを一切用いない…。予備知識なしで鑑賞しても、一目で彼の映画だと気づくだろう。

 とりわけ、『父の秘密』の主人公だった“ダメ父”の比ではない、本作での母親の描き方は、もはやモンスター映画の域。それでもこの母親に、モンスターと簡単に片づけてしまえない説得力があるのは、言い換えるなら、モンスターとしての怖さ(エンターテインメント性)だけでなく、欲望に抗えない生身の人間らしさ(リアリティー)を併せ持っているのは、フランコ監督の人間を見る目が確かだからだろう。コンペ部門の脚本賞を受賞した前作『或る終焉』に全く引けを取らない傑作である。★★★★★(外山真也)

監督・脚本・編集:ミシェル・フランコ

出演:エマ・スアレス、アナ・バレリア・ベセリル、エンリケ・アリソン、ホアナ・ラレキ

6月16日(土)から全国順次公開


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