花まるシネマ

『わたしたちの家』 1つの家で同時進行する2つの物語

2018年1月09日

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

 この映画の主人公は、家である。コッポラの『タッカー』の主人公が自動車だったように、リーフェンシュタールの『オリンピア』がアスリートの映画である以上にアスリートの肉体の映画だったように。視覚に訴え掛ける映画としては、人間が主人公であるよりもむしろ正しいあり方だろう。その事実に自覚的であるだけでも、新人女性監督・清原惟の世界へと開かれた未来に、期待せずにはいられない。

 では、主人公が家とはどういうことか? 本作では2つの物語が同時進行する。1つは、父親が失踪して母親と2人で暮らす中学生の女の子が、母親に恋人ができたことに葛藤する話。もう1つは、記憶をなくした女性と、彼女を自分の家に連れてきて住まわせる女性の同居生活。そんな別々の出来事が、入口がシャッターになった独特の構造を持つ同じ2階建ての一軒家で繰り広げられるのだ。

 まるでSFのパラレルワールドのようだが、そのこと自体は強調されない。舞台となるこの家こそが、物語や登場人物よりも重要だからだろう。実際、見ていてまず気になるのは、この家の間取りがどうなっているか? 住人たちも血肉はしっかり通っているが、同時にそれを観客に教えるために行動しているようにも見える。建物と家具や調度品、人物の動きが相まって切り取られた画面の強度に圧倒される。『タッカー』で次から次へと登場する自動車たちの艶やかなボンネットの光沢に心を揺さぶられたように。★★★★★(外山真也)

監督:清原惟

出演:河西和香、安野由記子、大沢まりを、藤原芽生

1月13日(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開


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